AI活用で課題解決~新潟人工知能研究所の挑戦

近年、生成AIやビッグデータ分析をはじめとするAI技術が急速に進化し、社会や産業、日常生活に大きな変化を与えています。当初、AIは人の仕事を奪う存在と見られていましたが、人口減少や高齢化が進む中、多くの企業が人手不足に直面し、企業活動を継続していく上でなくてはならない存在になっています。特に、昨今のChatGPTなどの生成AIの登場がきっかけとなり、AIが身近な存在として普及し、AIを業務に取り入れる企業が増加しています。
一方で技術者の偏在という課題があります。本来人口減少が進んでいる地方こそAIを活用すべきであるにも関わらず、その偏在から、地方ではAI活用が十分進んでいないのが現状です。今まさにそうした環境整備が喫緊の課題となっています。

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(新潟人工知能研究所の開発事例)

2017年、新潟初のAIベンチャーを設立

日本全体が人口減少という厳しい現実に直面する中、新潟県も例外ではありません。新潟県の総人口は10年前には230万人程でしたが、現在は約210万人と年々減少しており、これから10年後には200万人を下回ると予測されています。特に地方では人材不足が深刻で、AIの活用がその解決策として期待され、事業運営を継続する上でAIの導入は急務といえます。そうした状況に先駆けて、NSGグループは2017年に新潟人工知能研究所(以下NAIL。Niigata AI Lab)を設立しました。企業等の課題解決を目指すAIベンチャーです。NAILは、AI技術を活用したプロダクト開発をはじめ、顧客が保有するデータを解析し、個別のニーズに応じた「オーダーメイド型」のソリューションを提供しています。
また、NAILは、AIリテラシーを備えた人材育成にも取り組んでいます。新潟県内外の大学や専門学校で講師として授業を行うほか、社会人向けセミナーや教材開発を通じて地域のAI活用を支援しています。

企業の課題解決に向けたAI活用の取り組み

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(共同特許権を取得した「要素自動配置システム及び要素自動配置方法」のイメージ図)

NAILが共同開発した事例として、新潟県長岡市のオムニ技研株式会社(以下、オムニ技研)とのプロジェクトがあります。このプロジェクトは、人材不足や技術継承等といった課題を背景に立ち上げられました。オムニ技研は、地質・地盤調査や、地盤改良工事、土木建築設計などを行っている企業です。地盤改良における杭の配置作業では、従来、手作業でピッチ幅や基準点からの距離を採寸していましたが、時間と労力を要することなどが課題でした。これを解決するため、両社は2年以上にわたる議論を重ね、画像認識AIを活用した「要素自動配置システム」を共同開発しました。このAIにより、図面上に配置した杭の位置を自動認識し、基準点からの距離を自動で採寸することが可能となりました。
この成果は「要素自動配置システム及び要素自動配置方法」として共同特許権を取得することにつながりました。

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(献立作成支援システムのイメージ図)

NSGグループ内のプロジェクトとして、NAILは株式会社日本フードリンク(以下、日本フードリンク)と共同開発を進めています。日本フードリンクは、病院、福祉施設、学校等における給食受託業務を展開しています。給食事業では、食材原価や水道光熱費、人件費などのコスト適正化が重要な課題で、献立作成業務の効率化もその一つです。
このような課題に対応するため、献立作成業務の効率化を目指し、両社は献立作成を支援するAIシステムを開発しています。このシステムでは、利用者の年齢や健康状態に応じて栄養バランスの取れたメニューを作成することができます。一食あたりのコスト管理も実現し、栄養士の負担軽減を実現します。試験運用では、栄養士の献立作成に要する時間の80%の削減を見込んでおり、これにより生まれた時間を、調理現場への指導など、コミュニケーションが大切な、人にしかできないことにあてることができます。現在試験運用を行っている事業所での検証を経た後、50施設への展開が予定されています。

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新潟発のAI技術が切り開く未来

NAILとAIシステムの共同開発を行ったオムニ技研は、新潟県内にとどまらず全国への展開を視野に入れているそうです。同社では、同じ課題を持つはずの地盤改良分野の同業他社にAIを活用した技術を提案する計画を進めています。
また、OpenAIが新たにリリースしたAIモデルシリーズ「OpenAI o1」は、特にSTEM(科学、数学、プログラミング)分野で高度な推論力を発揮し、その能力は博士課程レベルとも評されています。AIの進化は日進月歩で進み、相当幅広い種類の課題を解決することができるように進歩しています。何か課題があったとして、その解決策のファーストチョイスとして、AIを真っ先に思い浮かべるべき段階に来ていると思います。
NAILは、企業が抱える課題に寄り添い、AIを活用した解決策を開発しています。これからも成功事例を積み重ね、新潟発のAI技術が全国、さらには世界へ広がり、各地域の持続可能な発展に貢献できるよう取り組みを続けていきます。     〆