個性を伸ばす新たな選択肢――開志学園中等部の開設

2025年4月、NSGグループは新潟市東区では初めてとなるフリースクール「開志学園中等部」を開設します。開志学園中等部は中学生と小学校高学年の児童・生徒を対象とし、多様な学習ニーズに対応する新たな教育の選択肢となることを目指してスタートします。多くの児童・生徒が義務教育制度に則り、居住する校区をはじめとした小中学校に通います。その一方で、様々な理由で通うことが難しい児童・生徒が少なくないという事実もあります。開志学園中等部は、そのような児童・生徒が、学ぶ内容や学ぶ場所を自分で選び、安心して学べる環境を提供することを目的としています。
近年、日本におけるフリースクールの役割はますます注目を集めています。その背景には、学校の環境や教育システムになじんでいない児童・生徒の増加や、学習スタイルの多様化があります。文部科学省の調査によると、小中学校における不登校の児童・生徒数は年々増加しており、令和5年度には全国で34.6万人と過去最多を記録しました。これは前年比で15%の増加となり、不登校の児童・生徒を支える仕組みを構築する必要性がこれまで以上に高まってきていると言えると思います。
開志学園中等部を開設する新潟市においても、不登校の児童・生徒数は令和5年度には2,280人に達し、1000人当たり41.0人の割合となっており、全国での同割合の36.5人と比較しても高くなっています。しかし、その中でフリースクールや教育支援センターなどの各種支援施設に通えている児童・生徒は、新潟市では全体の約1割(約200人)に過ぎません。不登校の要因は多岐にわたり、すべての児童・生徒がフリースクールを選択するべきというわけではありませんが、小中学校に通うことが難しい児童・生徒にとって、フリースクールは自分に合った学び方が出来る、学びの場としての可能性を秘めていると思います。

開志学園中等部の多様なサポート体制

フリースクールの大きな特徴は、児童・生徒一人ひとりの個性に寄り添った柔軟な学びの環境を提供できる点にあります。
開志学園中等部では、リアル教室での対面学習だけではなく、自宅からオンライン上で登校する「メタバース教室」も選択可能です。これにより、地理的な制約など個別の事情に左右されることが減り、児童・生徒が自分たちに合った最適なスタイルを選んで学び続けることができます。

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(メタバース教室のイメージ図)

また、開志学園中等部では、児童・生徒が自らの興味や関心を深めるための学習時間「ME-TIME」を設けています。この時間を活用し、アート・音楽・プログラミング・スポーツなど、多彩なプログラムを通じて児童・生徒の自己探求をサポートします。多様で柔軟な学びの機会を設けることで、児童・生徒が自分の「興味」や「好き」を見つけ、伸ばすことを目指します。これは、児童・生徒が失敗を恐れずに挑戦する習慣を身につけることにもつながると思います。
更に、自然・社会体験も行い、外に出た活動も積極的に取り組んでいくことや、実践行動学研究所の協力を得ながら、レジリエンス(しなやかでへこたれない心の強さ)を身に付ける特別プログラムを設定し、実施する予定です。
加えて、学習支援だけでなく、心理的安全性が確保できる環境も整えています。専属スタッフである教員のほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーがチームとなって、児童・生徒の生活面での相談や進路相談などにも細かに対応する体制を整え、安心して学べる環境を整備しています。

不登校の背景と開志学園中等部の対応

不登校には様々な要因が存在しますが、その中には「起立性調節障害」が要因の一つになっているケースもあります。これは自律神経のバランスが乱れ、めまいや腹痛、起床が困難になるなど様々な不調を引き起こし、小学生の約5%、中学生の約10%が発症するといわれています。朝の起床時など午前中に不調が生じやすく、朝の登校が困難になるため、学校へ通えなくなるケースが少なくありません。
開志学園中等部では、起立性調節障害を患う児童・生徒に対応するため、午後からの登校も可能な柔軟な時間割を採用しています。朝の決まった時間に登校するのではなく、自分の体調や生活リズムに合わせて学べる環境を整えることで、無理なく登校、学習を継続できる仕組みを構築しています。また、全国約2,600校で導入されており、中学校での出席認定の実績があるAI教材「すらら」を導入し、アニメーションによる対話式レクチャーを通して児童・生徒の習熟度に応じた学習を個別に支援します。
開志学園中等部での学習成果が在籍中学校の出席として認められるよう、文部科学省や教育委員会の通知に基づく対応を行います。

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(開志学園中等部における「出席の認定」の概要)

時代とともに変わる教育の在り方

開志学園中等部の名称は、NSGグループの単位制・通信制高校の「開志学園高校」に由来しています。開志学園高校は20年以上にわたり、高校生年代を対象に多様な学びの場を提供してきました。生徒は自身の学習スタイルに合わせて、「週4日コース」「週2日コース」「週1日コース」「オンラインコース」から学習形態を選ぶことができます。また、進学した高校になじめなかった場合などに、転入学・編入学に関する相談を随時受け付け、一人でも多くの生徒が充実した高校生活を送れるよう環境を整えています。
また、以前このコラムでご紹介しましたが、NSGグループでは、2025年4月に広域通信制高校「開志創造高校」を開校します。全国どこにいても安心して学べる環境を整備し、青森県、埼玉県、熊本県、新潟県上越市にはサポート校もあります。
教育の在り方は時代とともに変化しており、すべての児童・生徒にとって最適な学びの場が一律であるとは限りません。一人ひとりの個性や置かれた環境を支える、多様な学びの場が存在することが大切だと思います。開志学園中等部が、そうした新しい学びの形を提供し、未来を担う児童・生徒の可能性を広げる存在になれたら嬉しく思います。
NSGグループは、今後も変化し続ける社会の中で、児童・生徒が未来を切り開く力を育めるよう、多様な学習ニーズに応える教育を提供してまいります。     〆