インバウンド需要の高まりと新潟の可能性
最近、街を歩いていると訪日旅行者が増えたと感じる機会が多くなりました。実際、観光庁のインバウンド消費動向調査によると、2024年の訪日外国人旅行者数は1月の速報値で3687万人、前年比で47.1%増、コロナ禍前の2019年比でも15.6%増と、その実感を裏づける結果が出ています。また、2024年の訪日外国人旅行消費額は1月の速報値で8兆1395億円に達し、前年比で53.4%増、2019年比で69.1%増という勢いで伸びています。さらに、宿泊者数も増加しており、2024年2月の速報値では年間の延べ宿泊者数は1億6360万人と、2019年比で41.5%増と数字が発表されています。
これらのデータからも、日本の観光業が大きく成長していることがわかりますし、政府が観光立国推進基本計画で示している通り、観光業が日本の成長戦略の重要な柱になっていることを改めて実感します。
一方で、新潟県のインバウンド市場には、いくつかの課題があると言われています。特に、ウインターシーズンにはスノーリゾートを目当てに多くの訪日旅行者が新潟を訪れますが、それ以外の季節にはインバウンド需要の創出に苦戦しているのが現状です。地方への誘客という観点では、東京、大阪などのゴールデンルートや、北海道、沖縄などの主要観光地以外の地域は同じ課題を抱え、横並びの状態と言えるかもしれません。訪日旅行者の方々にとって、新潟は観光地として知名度がまだ低く、今後さらに増加の余地があると感じています。新潟ならではの魅力的なオリジナル観光コンテンツを企画し、訪日旅行を検討している方々の目に触れる機会を増やしていく事で、新潟への来訪者はきっと増えていくはずです。新潟県人は控えめでPRが苦手とよく言われますが、短期滞在者には、「二度目、三度目の訪日旅行の選択肢」として、長期滞在者には「旅の充実度を増す選択肢」として、新潟からしっかりPRしていくことも必要と思います。
新潟ならではの体験を世界へ

NSGグループの愛宕商事株式会社の旅行事業部では、2019年にインバウンド向けの新規事業として「EDGE OF NIIGATA」を立ち上げました。EDGE OF NIIGATAは、新潟ならではの観光資源をインバウンド向けにコンテンツ化し、ターゲット層に合わせたコンセプト型ツアーを開発する事に力を入れています。
その一環として、韓国・台湾・中国・モンゴル・シンガポール・タイの旅行会社と連携し、新潟を象徴する日本酒の体験ツアーやマンガ制作の体験ツアーなど、特定のテーマを持ったツアーを企画・販売しています。
例えば、日本酒のインポーターが運営する台湾の日本酒を学ぶ学校の受講生を対象に、日本酒文化への理解を深めることを目的としたツアーを実施しました。新潟県内の酒蔵を訪れ、実際に酒造りを体験し、新潟の各地から酒蔵が集まる「にいがた酒の陣」へも参加するという内容です。
また、マンガ制作の体験ツアー「マンガブートキャンプ」は3泊4日でプロが指導する本格的なプログラムで、観光庁によるプロポーザル案件に採択され、NSGグループの開志専門職大学と協力して企画しました。それらのような訪日旅行者の目的や関心に合わせた戦略的な誘客を行っています。新潟港へのクルーズ船寄港のチャンスを活かした観光施策にも積極的に取り組むなど、インバウンド需要を多角的に創出しようと取り組んでいます。
加えて、愛宕商事(株)旅行事業部ではアジアの成長を新潟に取り入れようと、新潟香港協会、新潟ベトナム協会、新潟シンガポール協会の活動に積極的に関わり、それらの協会の事務局も運営しています。今年5月には、世界の香港協会の「アジアフォーラム」を新潟で開催し、約100名の外国人を新潟に招く計画です。フォーラム終了後には、県内各地を巡るエクスカーションも企画しています。

観光業が生む波及効果
インバウンド需要の拡大は、地域経済に大きく貢献する可能性があります。観光業は多岐に渡る産業と密接に関連しており、その活性化は雇用の創出や関連セクターの振興につながります。例えば、宿泊・飲食・交通・土産物といった直接的な観光関連産業はもちろん、農業や製造業、建設業、サービス業などにも二次的・三次的な波及効果が及びます。地元の農産物や製品への需要が高まり、施設の新設やインフラ整備が進むことで、地域の様々な事業者へプラスの影響が及ぶことが期待できます。
また、訪日旅行者に限らず、新潟県外からの誘客の増加は、外部資金を呼び込む上で効果的です。県外からの来訪者が増えれば、新潟県内での消費が拡大し、そこから、雇用拡大や賃金上昇といった好循環が生まれる可能性もあります。
さらに、新潟の伝統文化や特産品、オリジナルコンテンツが旅行事業者やSNSを通じて世界に発信されることで、輸出やオンライン販売の増加といった機会創出にもつながる可能性があります。外貨の獲得は、内需だけに頼らない、持続可能な成長を実現していく上でも重要なことだと思います。NSGグループは、新潟の観光業のさらなる発展の一助となれるよう、インバウンド市場の可能性を最大限に引き出すべく取り組んでまいりたいと思います。 〆