その志で、門を開け。―若者のベンチャーマインドを育む“Open Gate NIIGATA”

11月11日から15日にかけて、新潟市中央区を舞台に「LAST NIIGATA 2025 NIIGATA INNOVATION WEEK」が開催されました。私も、「Design Dimension 2025 NIIGATA」のトークセッションに登壇いたしましたが、地域発のイノベーション創出を掲げ、官民・大学・スタートアップが一体となって取り組むイノベーションウィークです。その最終日に、開志専門職大学を会場に「Open Gate NIIGATA 2025 ALL新潟大会」が開催されました。

Open Gate NIIGATAは、高校生から大学生、専門学校生、高等専門学校生までの若い世代が新たなビジネスアイデアを発表し、競い合うイベントです。今年は、県内各地で開催された予選ラウンドと一般応募をあわせて、過去最多となる111組がエントリーし、若者のベンチャーマインドの高まりを一層感じられる大会となりました。

最優秀賞には、高校生部門(レインボーゲート)では聖学院高校のチーム「Bedless Adventure」が選ばれました。病院で孤独を抱える子どもたちに体験型サービスを提供するという、思いやりに満ちたアイデアです。大学・専門・高専部門(ブレイブゲート)では、長岡技術科学大学のチームによる「新規農家を支える生成AIアプリ」が最優秀賞に選ばれました。農業経験の浅い方が直面する農作業や判断などの課題に寄り添う実用性の高い提案で、受賞者は来年の起業も視野に入れているそうです。審査員からは「大人のビジネスコンテストにも引けを取らないレベル」「ぜひ実行に移してほしい」と高く評価されました。

学生による起業を促進するエコシステムの形成

開志専門職大学では2021年、在学生を対象に「開志専門職大学ビジネスアイデアコンテスト」を開催し、2022年には高校生にも門戸を広げて実施しました。このコンテストが2023年からOpen Gate NIIGATAへと発展する前身となり、若者の挑戦を後押しするエコシステムの基盤が形づくられていきました。
この取り組みから、すでに起業家が誕生しています。事業創造学部4年の古津瑛陸さんは、2021年度のコンテストでグランプリを受賞し、副賞として、事業創造キャピタル株式会社が運営する、開志専門職大学の大学ベンチャー投資ファンド「開志エンジェルファンド1号」から最大500万円の出資検討を受ける権利を獲得しました。2022年に、シニア向け完全栄養食ブランドを手がける株式会社LacuS(ラコス)を設立、2023年には、開志ファンドから約500万円の出資を受けました。昨年には1億円超の資金調達を実現し、製造拠点の整備と製品ラインアップ拡大、ECの強化、人材採用に充てられます。介護食市場でのシェア拡大を進め、上場を目標に事業のスケールアップを加速させるフェーズに入っています。

Open Gate NIIGATAを運営する開志専門職大学の起業家教育研究センターは、一般社団法人新潟県起業支援センターと連携し、「起業家道場」という学生起業家養成機関を作り、サークル活動(放課後の課外活動)として、起業に興味ある学生に対して、起業に関する支援を一気通貫で提供しています。具体的には、ビジネスアイデアの立案とブラッシュアップ(壁打ち)、Open Gate NIIGATAへの出場、事業計画の作成、学内2Fセンタースペース内での法人設立(登記)、事務所スペース貸出、「開志発ベンチャー」称号の申請(学長が承認)、起業後の開志ファンドからの資金調達支援などです。開志ファンドからの出資後は、事業創造キャピタルがVCとして伴走支援します。NSGグループの各法人と協力しながら、開志発ベンチャーを成長支援する環境を整えています。

(左:古津瑛陸さん 右:(株)LacuSが開発・販売する完全栄養食「Me ICE」)

Open Gate NIIGATAは、開志専門職大学内にとどまらず、「新潟全土のオープンなコンテストによる高校生と大学生の起業意識(アントレプレナーシップ)の目覚めの機会」というコンセプトに発展させ、開志専門職大学・新潟大学・事業創造大学院大学、新潟の企業が組成する実行委員会形式で運営する形態にリニューアルされました。今年で3回目となりましたが、毎年、参加者数が30%アップで拡大しています。新潟県を初め10以上の自治体からの後援をいただいています。大学や企業など多様なステークホルダーが連携して、若者に挑戦の機会を提供しています。昨年から、一次書類審査に加え、予選ラウンド方式(地区ごとの参加者によるプレゼンテーションによる審査、入賞者が11月のALL新潟大会に出場可能)を導入しました。今年は、予選ラウンドとして、開志ラウンド、新潟大学ラウンド、長岡ラウンドに加え、燕三条ラウンドが新設されました。来年は、新発田地区、南魚沼地区などでの予選会開催を計画しています。新潟全土に予選会を増やし、新潟各地の若者に発表の機会を与える大会へと成長していきます。

挑戦する若者を支える地域一体のバックアップ

開志専門職大学は、「実践型教育」と「地域創生」を教育理念に掲げる専門職大学です。その中でも、起業家教育研究センターは、Open Gate NIIGATAの実行委員会の中心となって、関係大学や企業・自治体と連携しながら、企画、後援・協賛募集、準備、当日の運営などの役割を担っています。
Open Gate NIIGATAは、若者のベンチャーマインドを高めるとともに、「その志で、門を開け。」を合言葉に若者が社会に一歩踏み出すきっかけを提供し、新潟の未来を活性化させる大切な役割を果たす取り組みとして発展しています。
新潟県の新設法人率は全国平均よりも低く、2024年度の東京商工リサーチの調査によると全国38位です。Open Gate NIIGATAをはじめ、ベンチャーマインドを醸成する取り組みや、起業を支援する環境の整備がより一層求められます。
NSGグループも、若者をはじめ起業を志す方々が挑戦しやすい環境作りに、地域の皆様と共に引き続き取り組んでまいります。    〆