東京一極集中から地方分散へ【コラム183】

新型コロナウィルスの感染拡大は東京一極集中のマイナスの側面を露呈し、東京をはじめとした大都市部は地方と比べ、経済社会活動において非常に大きな影響が出ました。
新型コロナウィルス対策として3密を避けなければいけない訳ですが、東京都は人口が約1400万人、人口密度は1㎢あたり約6,400人、人口集中エリアにおいては人口密度2万人を超えるという超過密地域です。新潟県の人口は約220万人、人口密度が約175人です。新潟県は人が定住していない山岳部も多いため比較しにくい面もありますが、市街地と農村地帯からなる新潟市の人口密度1,092人と比較してみても、どれだけ密集しているかがよく分かります。
テレワークの推進や時差出勤など新しい生活スタイルで活動を再開していますが、これだけ人口が集中していては、例えば満員の通勤電車の過密状態の解消は難しいのではないでしょうか。

「20代から40代の若者の過半数が地方に移住しても良い」というコロナ以前に内閣府が集計した調査結果がありましたが、具体的に行動に移す人がそう多くなかったという印象です。しかし、感染へのリスクや生活に対する不安、またコロナを契機に一気に加速したテレワークやオンライン会議の普及などを背景に、地方移住の流れが今後強まるとも言われています。
新潟出身でソフトウエア開発を手掛ける㈱フラーを創業した起業家の渋谷さんが、コロナ禍を背景に新潟にUターン移住して最近話題になりました。新潟を拠点にさらなる成長を遂げて、地方にいることはマイナスにならず全国、世界を相手に十分戦える事を証明してもらいたいと思います。

新型コロナウィルス感染症の拡大を境にビジネス習慣は大きく変わりました。以前は、まずは直接会って挨拶してというスタイルが一般的でしたが、最初からオンラインで面会するという事に対してハードルが一気に下がったように感じます。いざ経験してみると、移動を伴わないため時間効率は向上し、スピード感もアップしたと思います。
東京にいなければ人に会えない、仕事が進まないということはなくなり、様々なものがオンライン化され、人や情報が集積しているという東京一極集中のメリットは相当減少したのではないかと思います。地方にいてもこれまでと同じようにビジネスが進むのであれば、広々とした空間で過密を避けることができ、少し足を延ばせば自然があり、恵まれた食があり、故郷の親や兄弟、友人に囲まれて心豊かに生活することができるのは地方の大きな魅力です。新潟の場合は新幹線に乗れば最短1時間40分で東京に行くことができるので、必要な時にはいつでも東京に行ける環境です。
キャリア採用においてNSGグループではこれまでも、Uターン、Iターン者を数多く受け入れてきています。面接を受けている本人は入社意欲を高く持っていても、採用面接が進む中で、生活の場を新潟に移すことに対して家族の反対があることを理由に、残念ながら入社を辞退する方が大勢いました。このコロナ禍を受けて、人々の価値観が変容し、地方移住を積極的に捉える方が増えるのではないかと期待しています。例えば子育てをするなら少しでも不安が少なく、のびのびとした環境の地方を選びたいという方も増えてくるのではないかと思います。

地方で暮らす事の良さが改めて見直される機会ではありますが、東京から地方に向けた人の流れを作り出すためには、各地方も努力しなければいけません。地域に人を呼び込むためには、産業や文化の面で地域が活性化し、魅力的に感じられる町でなければいけないと思います。
新型コロナウィルスの影響により地方の産業も大きなダメージを受けています。しかし、ウイズコロナの中で社会には解決しなければいけない課題が山積し、その解決にこそビジネスチャンスがあります。厳しい状況の中ではありますが、会社の事業構造を大きく見直したり、チャレンジすることで新しい事業ドメインを構築したりする好機にもなります。
新型コロナウィルスは私たちの生活や価値観に変容を迫ってきました。これまでの延長線上にない新しい社会を創っていかなければいけません。私も新しい時代における持続可能な成長のモデルを創るべく、新たな事業の創造による地方創生に積極的に挑戦していきたいと思います。            〆