スポーツのこれから~コロナを機にさらなる発展を【コラム184】

新型コロナウイルスの感染拡大がなければ、今頃は日本中が東京オリンピック・パラリンピックに沸き、世界中から人々が東京に集まって盛り上がっていたことでしょう。オリンピックは平和の祭典と言われますが、スポーツイベントは戦争がないことをはじめ安心して暮らせる状況を前提として成り立つもので、1年前には想像もできなかった事態に世界中が見舞われました。全てが予定調和で進むのではなく何が起こるかわからないのが世の定めなのかもしれませんが、スポーツのこれからについて考えてみたいと思います。

コロナ禍において、オリンピックの延期をはじめ、プロスポーツや学生スポーツの大会などを全く開催できない時期が続きました。感染リスクに細心の注意を払いながら、徐々に再開されるようになってきましたが、規模や観戦者の人数を制限しながらの再開です。
プロスポーツやスポーツ大会を観戦するというライブエンターテイメントは、同じ場所に大勢の人々が集まり、大きな声を上げて、会場全体が興奮や感動を共有する事で独特の一体感が生まれ、非日常の空間を体験できるところが大きな魅力だと思います。コロナウイルスの感染対策においては、過密な環境を避けることが必須となりますので、超満員の会場でそのような空間を楽しむ事はしばらく難しい状況です。

しかしながら、試合会場に足を運べる人数は減少させざるをえないとしても、応援している地元チームや選手が私たちに元気や勇気を与えてくれる存在や、地域の象徴として人々を繋ぐ存在であり続けることは可能であると思います。それはコロナ禍においても変わらずに保ち続ける事ができるスポーツの価値であると思いますし、先が見えない閉塞感漂う状況下だからこそ、そうした存在価値を発揮しなければいけないとも思います。

ウイズコロナの社会においては、遠隔でもスポーツを楽しめるようなデジタル技術を活用したスポーツ観戦の方法が大きく進歩するでしょう。5GやVRの技術によりこれまで経験したことのない新しい観戦体験ができるようになることが期待されています。
コロナ禍をきっかけに、チーム・選手と応援してくれる人々とのつながり方も変化することでしょう。スポーツチームや選手は多くの人々の支えによって成り立っています。選手達も一時的に活動の機会を失い、自分が競技に打ち込むことができる日々が幸せなものであり、応援してくれるサポーターやファンの皆さんの支えがあってはじめて活動ができるのだと感じたに違いないと思います。ステイホーム期間あたりから、SNSなどを通じてメッセージを発信したり、直接交流する機会を設けたりする選手が増えたように感じます。選手一人ひとりが、今自分にできる事を真剣に考え、行動に移したのであろうと思います。直接会って握手はできなくても、インターネットを通じて選手と応援してくれる人々との間に生じたつながり方の変化は、良い方向の変化であると思います。

現在、世界中で新型コロナウイルスの治療薬の開発に取り組んでいますが、この感染症を克服し、一刻も早く平穏な日常が戻ってくる事を期待しています。しかしコロナを克服した後の社会において、全くコロナ前と同じ社会に戻るかというと、そうはならないと思います。冒頭で書いたライブエンターテイメントで得られる興奮や非日常の体験価値が低下する訳ではないため、コロナを克服できれば大勢が集まるイベントは再開されることになるでしょう。それに加えて遠隔で楽しむための技術の進歩はそのまま残り、多様なスポーツの楽しみ方をできるような社会になって欲しいと思います。長いスパンで考えたときに、コロナ禍のこの時期がターニングポイントになり、スポーツ文化が大きく発展したと振り返ることが出来るようになればいいなと思います。
いつの世もスポーツは人々に夢や希望を与え、地域を結び、活気をもたらしてくれる存在です。今は大きな変化の過程において手探りの状況ですが、そういう状況であるからこそ考え抜き、知恵を出し、明るい未来を目指して発展していければと思います。私もアルビレックスや学生スポーツなどの活動を応援していきたいと思います。                                〆