Stay local, Look global【コラム185】

新型コロナウイルスの感染拡大は、経済社会活動において多大なる影響を与えています。リーマンショックや東日本大震災など自然災害による被災との違いは、経済危機や災害が起こった時を起点に復興に向かって進んでいくというようにはならず、ウイルス禍は長期に渡るという点です。ウィズコロナの時代、感染拡大の防止に最大限の注意を払いながらも、ウイルスと共存しながら経済活動を回復させていかなければいけません。
コロナウイルスによって社会に大きなパラダイムシフトがもたらされましたが、その中で様々な課題が生じ、それを解決することに新たなビジネスの機会が生まれています。これまでの常識に捉われえない自由な発想で社会課題の解決を図る事業へチャレンジすることでコロナ禍から復興を遂げる事ができるはずです。今こそ将来の成長に向けてチャレンジするべき時です。

私が以前から実践しようとしている心掛けの一つに「Stay local, Look global」という言葉があります。すなわち地方都市にあって、世界を見据え、世界を相手にしたビジネス展開を、という意味です。こうした視点はこれからの時代においてますます重要性を増してくると思います。これまで培ってきたノウハウを生かし、IT技術を活用してDX化を進め、商圏を世界中に広げることで活路を見いだすことが出来るはずです。
例えばコロナ禍を受けて、大学や大学院等はオンラインによる遠隔教育の体制を整え授業を行っています。コロナ以前は教員の中にはオンラインでの教育に対して様々な意見の方がいたと思いますが、そうした方々であっても教育活動を継続するためにはやらざるを得ないという状況が突如訪れました。学生は遠隔で講義を受ける事ができますので、インターネット環境があれば場所を選ばず、必ずしも日本国内にいなくとも学習できるという事にもなります。NSGグループでも世界各国から留学生を受け入れていますが、一部の方はコロナウイルスの影響で日本に入国できずに母国から授業に参加するという事も生じています。コロナ対応として急激に普及した遠隔教育は、国境を越えて世界中に教育サービスを展開する可能性を広げました。世界基準の教育コンテンツと教育体制が整えば、あとは世界中にアプローチすることで、全世界の人々を対象とする教育事業の実現が可能となります。
目の前の課題としてウイルス感染を避けた上で事業を継続する事が必要ですが、それだけでなく新しい生活様式やビジネス様式を前提として改めて自社の事業の本質を見つめる事で新たな機会を見つける事ができるものと思います。
 
東京一極集中が進み、地方からの人口流出が続いていましたが、東京を中心としたウイルス感染者の増加を受けて、東京圏への転入を転出が上回りました。また、地方への移住に関心を寄せる人が増加しているという調査結果もあります。内閣府によると、東京23区の20代の若者の35.4%が感染症の影響下において地方移住への関心が高くなったという結果が出ています。他にも首都圏に住む非正規労働者の6割が地方移住に関心があるという求人情報サイト運営会社の調査結果もあります。以前このコラムで書きましたが、様々なものがオンライン化され、人や情報が集積しているという東京一極集中のメリットは相当減少し、広々とした空間で過密を避け、自然の近くで心豊かに暮らすことができる地方生活への期待がその背景にあると思います。
そうした移住を希望する人々を地方が受け入れるためには、活き活きとやりがいを持って働くことが出来る職場がなければいけません。ウィズコロナの時代のニーズに合った事業の可能性を追求するとともに、 “どうしたら日本全国、世界中の人々に自社の商品やサービスを提供することができるか”という視点で新しい事業を考える企業が地域に増えれば産業は活性化し、その地域は地方移住希望者の受け皿にもなることが出来ると思います。私も“Stay local, Look global”の実践に取り組んで参りたいと思います。

また一方で、“Stay local, Look global”と共に“地産地消”という視点も重要です。コロナ禍おいてマスクや医療用防護服などの医療資材が不足する状況が起きました。これまではそれらのほとんどを国外からの輸入製品が占めておりましたが、絶対に必要なものを輸入だけに頼ることのリスクが改めて浮き彫りになりました。次回のコラムでは“地産地消”という視点で持続可能な地域づくりについて考察したいと思います。                  〆