新潟医療福祉大学から世界の舞台へ【コラム193】
私が総長・理事長を務める新潟医療福祉大学の職員で、水泳部に属する水沼尚輝さんが、4月9日に行われた第97回日本選手権水泳競技大会「男子100Mバタフライ決勝」において、自己ベストを更新する51秒03のタイムで優勝し、東京2020オリンピック競技大会の同種目で日本代表選手として選出されました。また、同じく本学の水泳部監督の下山好充教授(健康スポーツ学科)がコーチとしてオリンピック代表選手団に選出されました。
夢に向かって努力を積み重ねてきた水沼選手をはじめ下山監督やサポートするスタッフの皆さん、一緒に練習を積み重ねてきた部員の皆さん、水泳部がここに至るまでの礎を築いてきたOBやOGの皆さん、水泳部を支えてくださる全ての皆さんに敬意を表します。
水泳部は、健康スポーツ学科を開設した2005年に下山先生を本学に迎えると同時に、強化指定クラブとして発足し、今年で17年目を迎えました。オリンピック選手を輩出して欲しいという私の願いをこんなにも早く叶えてもらい、本当にうれしく思っています。水泳で強豪と言われている大学やスイミングクラブの多くは関東の団体で占められていますが、新潟という地方都市にあり、それもまだ創部して歴史の浅い大学からのオリンピック代表選出ということでもあり、大変注目いただいています。
以前このコラムで少し触れたことがありますが、水沼選手は高校時代にはインターハイでの入賞経験もないそうで、10代で頭角を現す選手も多い水泳の世界では遅咲きの選手です。水沼選手は新潟医療福祉大学入学後に才能を開花させ、4年生の2018年にインカレで優勝、卒業後も挑戦を続けるために職員として大学に残り、2019年には日本選手権で優勝し、同じ年に行われた世界選手権に男子100Mバタフライと男子400Mメドレーリレーで日本代表として出場を果たし、メドレーリレーでは4位入賞を果たしました。
日本トップや世界レベルで戦うトップアスリートには、競技指導にあたるコーチはもちろん、メンタル面や栄養面、リハビリテーションなど、それぞれ高い専門性を持ったスタッフのサポートが必要です。新潟医療福祉大学は、医療や福祉、スポーツ、リハビリテーション、栄養、看護などに関する高度専門職を養成する大学で、それぞれの分野の高い専門性を持つ教授陣が全国から集まっています。本学では、水泳部をはじめ、サッカー、バスケットボール、陸上、バレーボール、硬式野球、ダンス、卓球、テニスを強化指定クラブに指定し、それらのクラブは各分野の最先端のノウハウに基づくサポートを受けることができる環境にあります。監督やコーチ陣の指導に加え、こうした多面的なサポートで選手の活躍を支えています。
新潟医療福祉大学は、スポーツ医科学の研究という面でも注目される存在になっています。文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)の2018年から2020年まで3年間の新規採択の累計件数のランキングが公表されていますが、「スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野」において、筑波大学、順天堂大学、東京大学に続き4番目に採択件数が多い機関となりました。科研費は国内で最大の競争的資金であり、その採択においては厳正な審査が行われています。その採択件数が多いということは、社会的に高い価値のある研究が盛んに行われているという指標の一つになるのではないかと思います。
本学では、2010年に運動機能医科学研究所を設立し、感覚・運動機能、運動制御・運動学習および運動器に関する基礎研究、臨床研究に取り組んでいます。また、社会的要請の高い分野の研究活動を図るため、各種プロジェクト研究センターを設置し、保健・医療・福祉・スポーツ分野の発展に貢献する研究に積極的に取り組んでいます。
大学は、教育と研究が両輪となる機関です。新潟医療福祉大学は教育面において保健・医療・福祉分野の国家試験の合格率において全国トップレベルの結果を毎年残していますが、この科研費の採択数のランキングにより、研究領域においても全国トップレベルで取り組んでいることが客観的に示されました。
こうしたスポーツ医科学の分野で盛んに研究が行われているという特徴を持つ新潟医療福祉大学だからこそ、地方であってもトップアスリートをサポートする環境を提供できるのです。
この度の水沼選手のオリンピック出場決定は、新潟医療福祉大学の学生や教職員・OBOGはもちろん、地域に明るい話題を提供してくれました。マスメディアには大きく取り上げていただき、新潟市役所では、オリンピックでの活躍を期待する懸垂幕も掲げていただいています。また、地元からこうした世界レベルの舞台で活躍する人が出てくることで、子どもたちは「将来は自分もオリンピックを目指すんだ」と夢を持つことが出来るようになります。子どもでなくとも、努力をして夢を実現する人物の姿を見聞きすることで、水泳やスポーツに限らず様々な分野で夢に向かって挑戦しようという気持ちが芽生えてきます。水沼選手の活躍は地域全体に活気を与えることにも繋がるでしょう。
オリンピックの開催まで残すところ3か月を切りました。メダル獲得という更に大きな目標に向かい、充実した時間を過ごして、晴れの舞台で輝きを放ってくれることを願っています。 〆