マズロー博士が晩年に気付いた6番目の欲求とは【コラム200】
アメリカの心理学者マズロー博士が唱えた欲求5段階説をご存じの方が多いと思います。動機づけやモチベーションというテーマを考える際によく活用されている理論です。人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「所属欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5種類の欲求がピラミッドのように構成されており、低い階層の欲求が満たされると、より高い階層の欲求を求めるようになるというものです。5段階の欲求として幅広く知られていますが、マズローは晩年に5段階の欲求階層に加えてもう一つ上の6番目の階層がある事に気付いたそうです。
その6番目の欲求は「自己超越欲求」という種類の欲求で、地域やコミュニティ、社会、地球全体の発展を望む欲求です。「高い志を立てる事が人生をより良く生きる事につながる」という私の持論と、非常によく合致していると思っています。人生を語る際に「夢」や「志」という言葉をあまり区別せずに使われる方もいらっしゃいますが、私は「夢」と「志」を区別して使っています。「夢」の中には、自分の利益中心の利己的なものも含むものがあります。私は「志」を、自分以外の人を利する利他的な目的を含む、心に思い決めた目的や目標を表す言葉として使っています。そして、利する対象が多く、大きな社会貢献に繋がるような人生の目標、すなわち「高い志」ほど得られる充実感が大きくなると考えています。
私が新潟の中心部にある神社の宮司を務めていることは、以前にこのコラムで書いたことがあると思います。神社には、祭祀にいそしむことは勿論、人々の幸せや地域の発展に寄与するという役割もあります。45年前に、変化する時代の中でその役割を果たそうと、神社の境内の一角に校舎を設けてスタートさせた教育事業が、NSGグループの始まりとなりました。私の場合は、人の役に立ちたい、自分が生まれた土地に恩返しをしたいという志を立て、新潟の活性化をライフワークに取り組んできました。地域の活性化という利他的な高い志を立て取り組んでいると、時には困難な場面や壁にぶつかることがあります。それを乗り越えようとチャレンジする過程に充実感を感じて日々を過ごすことができていると思います。
これまでに事業を成功させた経営者の方とたくさん出会ってきましたが、中にはなんとなく幸せそうでない方もいました。事業を成功させ、お金も名声も得ることはできているはずなのに、マズローの5つの欲求が全て満たされているはずなのに、なぜか楽しそうでないのです。きっと利己的な目標をモチベーションに行動していて、それを満たす事はできたのでしょうけれど、何か物足りなさを感じているのではないかと思います。一方で、大きな富や名声を得てはいないけれどその人らしい幸せを感じ、コミュニティに貢献し、生き生きと輝いて日々を過ごしている方々にもたくさん出会ってきました。
地域の活性化という私の思いは当時のNSGグループのメンバーと共にまとめた経営理念に反映されています。NSGグループの理念として次の世代に引き継がれ、末永く社会の発展に寄与すると共に、職員・社員の皆さんの人生が充実すればと思っています。
コロナウイルス関連や気候変動、自然災害、少子高齢化、人口減少、経済格差の広がりなどのニュースが毎日流れてきます。また、世界共通の取り組むべき課題として、SDGsの17の目標とその更に具体的な169のターゲットが設定されています。このように、社会にはたくさんの課題が山積していますが、それを解決する事業に取り組むことで地域や国、国際社会の発展に貢献する事ができます。これからの時代を担う若い世代の人達には、マズローの6番目の欲求である地域やコミュニティ、社会、地球全体の発展に貢献する高い志を掲げて、社会の課題解決を図る事業にチャレンジして欲しいと思います。そうする事で、必ずやそれぞれの人生がより充実したものになると思います。 〆
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