新潟食料農業大学が産官学連携でオリジナル清酒を完成【コラム205】
NSGグループの新潟食料農業大学と今代司酒造が連携し、純米酒「胎内ししのくらの森」を完成させました。
オリジナルブランドの日本酒を作っている大学の先例はありますが、この清酒の特徴は何といっても、酵母、水、米がオール胎内市産というところです。胎内市産の酒米(五百万石)と朝日連峰・飯豊連峰を源とした胎内川の伏流水「どっこん水」を使用し、酵母はブナの巨大異形樹で有名な胎内市の「ししのくらの森」から分離し、この清酒を作るために「ししのくらの森酵母」を育種しました。
新潟食料農業大学ブランドの胎内オリジナル清酒の開発の構想は、実は開学前からありました。山、森、里、海がある豊かな自然と伝統文化に恵まれた胎内地域を対外的にアピールする事に寄与するとともに、地域と共に成長する新潟食料農業大学のシンボルとなりうるものとの考えからです。
開学後の2019年には、同大学の発酵・醸造ユニット長である渡邉剛志教授を中心としたメンバーにより、胎内市を象徴する場所から酵母を分離し日本酒を作るプロジェクトが立ち上がりました。2020年には、ブナの巨大異形樹で有名な「ししのくらの森」と、ハマナスの群生と夕日の鑑賞スポットとして有名な「はまなすの丘」から試料採取が行われました。自然界から分離した酵母のほとんどは、そのままでは清酒製造に適さないため「ししのくらの森酵母」をより高品質の清酒の製造に適した酵母となるよう育種改良が行われました。育種改良の研究は、新潟食料農業大学のフードコース発酵醸造ユニットの学生の卒業研究の一環として行われました。その後、純米酒にこだわりを持つ全量純米仕込みの酒蔵「今代司酒造」が総米200kgの実地醸造を行い、完成にいたりました。まずは「ししのくらの森酵母」の育種改良を優先して進めてきておりますが、「はまなすの丘酵母」も今後可能なタイミングで実地醸造を進めて行く方針です。
完成した純米酒は、森を連想させるような爽快感のある香りとフルーティーな果実のような香りが広がり、心地よい酸味とキレのある後味が楽しめるお酒となりました。
なお、このプロジェクトを進めるにあたり酵母の発酵力の検証においては新潟県醸造試験場にご協力いただきました。また、胎内市より酵母の採取場所のアドバイスをいただき、胎内市合併振興基金運用益活用事業補助金を活用させていただきました。このオリジナル清酒の完成は産学官が連携して取り組むことで成し得ることができたと、ご支援に深く感謝いたしております。
新潟食料農業大学は開学して4年が経過しました。新潟の農業や食品産業は日本でトップクラスの存在ですが、それを更に発展させていくためには産官学が一体となって取り組むことが重要であると考え、開学当初から「社会連携推進室」を設置しました。年を重ねるごとに産官学の連携が増加してきています。新潟食料農業大学が新潟における食・農分野の知の拠点として、産業発展や産業創出の一助となれるよう努力を重ねてまいりたいと思います。
また、この大学は「食」「農」「ビジネス」を一体的に学ぶことを特色とし、食や農の分野を担いビジネスとして発展させることができる人材の育成を目指しています。日本の食・農の分野は世界に伍していける有望な産業分野で、フードテックやアグリテックは現在注目を集めている分野でもあります。今後は食・農のフィールドにおける学生ベンチャーの育成にも取り組んで行きたいと考えています。 〆
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