【コラム第69回】 東北大震災に思う

 このたびの東北大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。亡くなられた方も多く、生活を根こそぎ奪われた方も数知れぬほどの大惨事となりましたが、一日も早く復興し日常の生活が戻ってくることを願っております。

 私が代表を務めますNSGグループにとっても、被災した福島県は第2の拠点であり、郡山市を中心に、5つの専門学校や学習塾を運営しています。

 震災被害を受け、避難を余儀なくされた職員とご家族を、新潟市にあるグループのコンベンション施設などで受け入れました。3月末時点でもまだ何組かのご家族が、避難生活を続けています。

 また、当グループでは被災した学生に対し、学費面や居住についてサポートを行うなどの対策を取っています。そうした中で郡山市の専門学校は、予定より1ヶ月遅れとなる新学期のスタートへ向け準備を進めています。

 私は神職も務めていますが、人間が自然と共に存在し自然に対し畏敬の念さえ持つということは、神道の基本的な考え方です。

 あたかも人間は多くの人工的な建築物を建て、自然を征服したかのような顔をしていますが、災害が人智では想定し得ない規模で起こることは、今回の地震が証明しています。

 集落や街を形成して生活する人間も、所詮は大きな自然の摂理の中での一員でしかないわけです。その中でどう生きていくか。「地域づくり」という視点は大切ですが、一方で「防災」と言う視点も忘れてはならないと思います。

 私のすむ新潟市もゼロメートル地帯が続いており、今回クラスの地震が襲えば犠牲者は最悪数十万人にものぼるかもしれませえん。今後は、津波に対する抜本的な対策を考えていかねばならないと思います。

 高いビルを避難場所に指定したり、そこに食料の備蓄を行うなどの準備も必要だと思います。そのために、一定の補助を行政が行うことも検討すべきだと思います。

 さらに新潟には世界最大の原発基地が柏崎にあります。福島第一原発の惨状を見る時、あのような悲劇的な事態を防ぐためにも、原子炉に甚大な被害が出ないための対策を一刻も早く取るべきだと思います。

 福島第一原発と比べ、津波に対し一定の対策が取られていた女川原発では、被害らしい被害は見られず、被災した地元住民の方々が原発サイトを避難場所にしていらっしゃると言います。十分な対策を取ったか取らなかったかで、これほどの差が出てしまいました。

 被災地の方のご苦労はしばらく続きそうですが、復興は「マイナスからの復興」になるわけで、悲劇を繰り返さないための防災面での取り組みは不可欠でしょう。それは避難路の確保であり、避難場所の確保であり、場所によっては逃げるための時間を稼ぐための防潮堤の建設ということになるでしょう。

 コストはかかるでしょうが、街の人口の半分以上を失ったり、地域全体を失ってしまうことを考えれば取らねばならない対策です。今回の震災には、政府の全知全能を上げた取り組みが求められており、国民にも企業にも被災地支援の姿勢が必要だと思います。

 思えば日本人はこれまでも、危機にあって底力を発揮してきました。黒船に対する明治維新しかり、敗戦後の経済成長しかりです。今回もこの災禍の中からの日本再生を信じています。


池田 弘