【コラム第80回】 APEC会場ウラジオストクを視察

 先日ロシア極東ウラジオストク市を訪れ、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の会場として整備が進む、ルースキー島などの様子を見てきました。ルースキー島とウラジオ市街地を結ぶ橋の建設や、関連道路の工事が行われていました。天然ガスは既に積出港まで引かれており、ガスのパイプラインはハバロフスクとウラジオストクの間の工事が計画されているそうです。クレーンが並び建設の槌音の響きに活気を感じた視察でした。
 ウラジオの市街地と会場となるルースキー島を東ボスポラス海峡をまたいで結ぶ橋は、全長3100メートル、橋脚から橋脚までの長さが1104メートルと、しまなみ海道の多々羅大橋を抜き、斜張橋としては世界一の長さになるそうです。
 ルースキー島のAPECの会場は、会議終了後はいくつかの公立大学を「連邦大学」として統合し、学生の街として発展させようと言うプランです。会議で宿泊施設として使われるホテルは、9月の会議が終わったら大学の施設となります。
 これまでロシアの資本投資と言えばヨーロッパロシアが中心で、極東ロシアは遅れていました。しかしアジアの発展が予想される中、中国や韓国などに隣接するこの土地の開発に、プーチン政権が国策として本格的に取り組んでいるという感じを受けました。
 プーチンは2兆円の公共事業を導入すると言っているそうですから、相当な開発が期待されます。
 こうした状況に、対岸にある新潟の可能性を一段と強く感じました。ロシアは石油やガスなどの天然資源を、世界経済の主役になってくるアジアへ供給することを重視しています。ベトナムと組んだ地下開発も行われます。日本海を取り巻く地域は、世界有数の発展の可能性を持つ地域です。
 ところで、三菱UFJ銀行のウラジオストク出張所開設などの動きもある一方で、APECをめぐる日本企業の工事の受注は、少し淋しい状況となりました。
 橋の建設のコンサルタント業務をIHIが受注し、北海道のセメント会社が一部工事の受注をしたくらいで、他の日本企業は今回の開発事業に関して受注できませんでした。もちろん新潟の企業は皆無です。せっかくのチャンスでしたが残念な結果となりました。

 今回のウラジオ訪問の印象ですが、食事は新鮮な魚介類や野菜などが並び大いに楽しめるものでした。昔と比べ色鮮やかになり、美味しくもなりました。昔の味気ない食事が嘘のような変貌ぶりです。
 そんなウラジオストクをはじめハバロフスクなどのロシア極東を結ぶ航空定期便が休便になっているのは残念でなりません。今回は、往路は成田からウラジオストクへ、帰路はウラジオストクからインチョン経由で成田というルートでした。工事中のウラジオ空港は、素晴らしい国際空港に変貌しそうでしたから、尚の事惜しまれます。

 新潟と大陸と言えば、去年8月に新潟とザルビノを結んだ日本海横断航路が就航しました。この航路についてはさらに経営を強化して盤石なものにするため、中国との合弁会社の話も進んでおり、来春以降は今よりも大型のフェリーが運航する航路に生まれ変わる予定です。
 環日本海をめぐる動きに改めて思いを馳せた今回のウラジオ訪問でした。

池田 弘