伝統を守り、新しい価値を生み出す「発酵のまち・沼垂」

10月20日、米国の旅行メディア『ナショナル ジオグラフィック』が発表した「Best of the World2027(2027年に行くべき世界の旅行先25選)」に、新潟県が日本から唯一選出されました。評価されたのは、越後妻有エリアのユニークな芸術祭と、新潟県内で何世紀にもわたり受け継がれてきた発酵文化です。

今回のニュースは、新潟の知名度向上や観光振興にとどまらず、この地域が長い年月をかけて育んできた文化や産業の価値に、改めて目を向けるきっかけになったと感じます。県内各地に息づく発酵文化の中から、今回は新潟市の沼垂に目を向けます。

新潟市では、酒・味噌・麹にまつわる文化を巡る観光モデルコース「発酵のまちめぐり」が紹介されています。その舞台となっているのが、酒蔵や味噌蔵、商店街が共存する沼垂です。地域に根付く発酵文化は、どのように受け継がれ、新たな価値へとつながっているのか。沼垂の歩みから考えてみたいと思います。

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沼垂に根付いた、発酵という地域の営み

新潟市の沼垂エリアは、かつて水運が栄え、酒や味噌、醤油などの醸造業が集積してきた地域です。水や米に恵まれた新潟の風土に加え、物流の拠点として人や物が行き交ってきた歴史も、この地域に醸造業が根付く背景の一つとなりました。

現在も、新潟駅からほど近い市街地に歴史ある蔵が残り、酒や味噌づくりに加え、蔵の見学や買い物、食体験を通じて発酵文化に触れられます。製造と流通を担ってきた沼垂は、地域の歴史や食文化を体験できるまちとして、新たな魅力を発信しています。

発酵文化は、単なる製造技術ではありません。地域の自然環境や歴史、産業、そしてそこで暮らす人々の知恵が重なり合い、長い時間をかけて育まれてきたものです。沼垂のまちには、そうした営みが今も息づいています。

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伝統を受け継ぎ、新たな価値を生み出す

こうした地域の文化を次の世代へつないでいく上で、事業承継は重要な役割を担っています。NSGグループでは、今代司酒造を2011年に、峰村商店を2013年に事業承継しました。歴史ある企業を引き継ぐことは、単に会社や事業を存続させることではありません。そこに蓄積されてきた技術や知識、そして地域とのつながりを受け継ぎ、未来へつないでいく取り組みでもあります。

一方で、受け継いだものをそのまま残すだけでは、その価値や魅力が時代とともに伝わりにくくなることもあります。守るべき伝統を大切にしながら、時代に合わせて新たな接点を生み出し、その魅力をより多くの人へ届けていくことも欠かせません。

今代司酒造や峰村醸造では、蔵の見学や商品の販売などを通じて、これまで醸造に関わりのなかった方々にも、その仕事や文化に触れる機会を提供しています。また、古町糀製造所では、古くから親しまれてきた糀を、甘酒など現代の暮らしに取り入れやすい形で届けています。

伝統を受け継ぐことと、新しい価値を生み出すことは、決して対立するものではありません。残すべきものを大切にしながら、新たな工夫や挑戦を重ねていく。その積み重ねが、地域に根付く文化を次の世代へ受け継いでいく力になるのだと思います。

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世界からの注目を、地域の持続的な価値へ

世界的な旅行メディアで新潟が紹介されたことは、国内外の人々に地域を知ってもらい、実際に足を運んでもらう機会につながる可能性があります。ただし、情報発信や認知度の向上だけで、地域の持続的な活性化が実現するわけではありません。

訪れた人が蔵を見学し、食や文化に触れ、その魅力を知る。そして、その体験が、地元企業や地域で活動する人々との交流へと発展していく。こうした一つひとつの出会いが、持続的な地域の活力につながるのだと思います。

地域の価値は、外部から評価されて初めて生まれるものではありません。長い年月をかけて培われた産業や技術、人々の営みの中に、すでに存在しています。その価値を未来へつなぐには、過去の形を守るだけでなく、時代の変化に合わせて新たな接点や活用方法を生み出していくことも必要です。

NSGグループが取り組む事業承継や新たな事業創造も、地域の方々とともに、受け継がれてきた価値を未来へ引き継いでいく取り組みの一つです。沼垂に限らず、新潟には、まだ十分に知られていない魅力や文化が数多くあります。これからも地域の皆さまとの連携を大切にし、その魅力が国内外へ伝わるよう、一つひとつの取り組みを積み重ねてまいります。  〆