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野球ひじを防げ!野球障害から球児を守る取り組みを継続~新潟リハビリテーション病院・山本智章院長

2019.12.28 Sat

理解を深めてほしいと毎年イベントを企画

山本院長は、さらに「検診だけでは不十分」として、野球障害の早期発見や予防法を学んでもらおうと、野球関係者らに熱心に働きかけ、新潟県青少年野球団体協議会との協働で「野球手帳」を作成。野球チームの監督・コーチだけでなく、保護者にも啓発活動を続けてきました。2013年からは新潟県青少年野球団体協議会とも連携して「野球フェスタ」を開催しています。

野球手帳は県内小学校の高学年の野球少年を中心に配布されています。

 

今年も12月21日(土)・22日(日)に、新潟市のHARD OFF ECOスタジアム新潟で、7回目となる「野球フェスタ」が開催され、約2,000人の野球少年や保護者、野球関係者らが参加しました。検診や野球教室を通じて野球障害を予防しようと、ひじや肩、腰痛など野球障がいの相談やチェックに加えて、正しい投げ方・トレーニング法、体幹トレーニング、栄養講座などが行われました。
「検診は早期発見にはつながりますが、やはり、日ごろから過重な負担を与えない正しい投げ方やトレーニングを行うことが大切ですし、子どもの一番近くにいる親御さん、コーチらの理解と見守りも大切。イベントを始めた頃に比べて、保護者や指導者の方の意識も随分変わってきました」と山本院長。

医療福祉大学野球部のほか、野球関係者らが正しい投げ方教室を開催。子どもたちは肘に負担をかけ過ぎない投げ方を真剣に学んでいました。

 

早期発見、早期治療を期して検診を実施。県青少年野球団体協議会との連携によって多くの子どもたちが検診に訪れるようになりました。

 

イベント終了後には研修会を開催。東京明日佳病院の渡邊幹彦院長を招き、「野球障害肩・肘の診断と治療―野球界の取り組みも含めてー」として特別講演が行われました。

 

野球少年の健やかな成長を守りたい

今年の野球フェスタも大盛況でしたが、山本院長をはじめ、検診に携わる医師、臨床検査技師、理学療法士、トレーナーらはすべてボランティアでの参加です。野球指導のコーナーでは、新潟医療福祉大学をはじめ、県内大学生や高校生が同じくボランティアで指導にあたっていました。最近、ようやく球数制限が公の話題に上るようになったものの、野球ひじの検診は医師や医療関係者のボランティアに頼っているのが現状なのです。そして、「以前に比べてだいぶ減りはしましたが、100人の子どもを診れば2人くらいは野球ひじの危険性を抱えている子がいます」とも。それでも、検診を始めた15年前に比べ、重症化する子どもたちは確実に減っているそうです
スポーツを通して人が大きく成長することは少なくありません。「私自身、野球を通じて多くの仲間を得、多くのことを学びました。野球をしていなかったら、今の私は違う人生を歩んでいたかもしれません」という山本先生。野球の現場と医療の現場、アプローチは違っても目指すものは同じ、「未来ある野球少年たちには、安全に野球を楽しんで、健やかに成長してほしい」ということです。「今後、さらに検診を拡大していくためにも、まだまだ情報発信を続けていきます」と山本先生は語っています。

地域のリハビリテーションの充実をモットーに開設した新潟リハビリテーション病院は、回復期リハビリテーションを中心に、転倒予防やスポーツリハビリテーション、在宅支援のための通所リハビリテーションなどの機能を併せ持つ、リハビリテーション複合施設となっています。

 

〈プロフィール〉
山本智章(やまもと・のりあき)
新潟リハビリテーション病院院長。新潟大学医学部卒(1985年)・医学博士。専門は骨粗鬆症・スポーツ医学。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、新潟県少年硬式野球連盟 医療顧問、新潟アルビレックスBB チームドクター、新潟アルビレックスBC チームドクター。所属学会は日本整形外科学会、日本整形外科スポーツ医学会、日本臨床スポーツ医学会、日本骨代謝学会、日本骨形態計測学会(理事)、日本転倒予防学会(理事)、日本骨粗鬆症学会(理事)ほか。2012年には新潟県青少年野球団体協議会との協働により『野球手帳』を発行。http://www.niigata-reha.jp/rehabilitation/recovery-period/effort/notebook/
著書に『「野球ひじ」を治す・防ぐ・鍛える―専門医が教えるセルフケア&トレーニング』など。

※一般社団法人野球障害ケア新潟ネットワーク
新潟県内の整形外科医、リハビリスタッフなどの医療従事者で構成され、野球障害を防ぐためにさまざまな活動を行っている。

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