地域を元気に、ジャンルを超えた踊りの祭典。「にいがた総おどり」、今年も9月に開催。

2023.08.14 Mon

数名の若者が高知よさこいの演舞に感動して、2002年に立ち上げた「にいがた総おどり」。過去20年の参加人数21万、観客動員435万人と、新潟の秋を代表する踊りの祭典となりました。今年は9月16日〜18日の3日間行われますが、締め切り前に満員となるほど全国からエントリーが集まっています。
今年の見どころや祭りに対する思いなどを、株式会社サイト(新潟総踊り祭実行委員会 事務局)代表取締役社長 能登剛史さんに伺いました。

港町特有の自由な気風を活かしてオールジャンルの踊りの祭典を企画

―「にいがた総おどり」とはどのように始まったイベントなのでしょうか?

能登 時は1999年にさかのぼりますが、当時、新潟の代名詞といえば日本酒や米ぐらいで、どうしたらもっと魅力的な街になるかを数名の若者と一緒に話し合っていました。そこでミレニアムカウントダウンイベントを企画することになり、高知のよさこい(須賀連)を招いたのですが、その演舞に感動して、「新潟で若者たちが躍動するような祭を作れないか」という思いが湧き上がったんです。それが「にいがた総おどり」の出発点ですね。

―ジャンルにとらわれない「にいがた総おどり」になった理由は?

能登「その土地ならではの踊り」を模索する中で、新潟らしさを調べたり、年配の方々から話を聞いたりすると、江戸時代には四日四晩踊り明かした盆踊りがあったようで、酒や醤油の木桶を叩くリズムに乗って型にはまらない踊りを楽しんでいたそうです。その背景には、港町特有の自由な気風があったからだと思います。だから私たちが時代を超えて21世紀に立ち上げる新潟の祭りも、あえて一つの踊りにこだわらない「オールジャンル」としました。参加条件はただ一つ、「心を込めて踊ること」だけです。

―第1回目の開催に向けて、どのような準備が必要でしたか?

能登 祭の開催を決意してワゴン車で寝泊まりしながら県内各地を回ってPRすると共に、各種手配に駆け回りました。そして1年の準備期間を経て第1回目が2002年。いろんな方々から支援をしてもらいながら開催に漕ぎ着けました。しかし蓋を開けてみると、予想をはるかに超える参加52団体、観客動員数13万人を記録。踊りを通して喜びや感動が生まれ、人が出会い繋がる。夢にまで見た光景を実現することができました。

よさこいブームの下火、コロナ禍を乗り越えて、新たな一歩を踏み出す。

―いままで開催している中で印象に残っているエピソードは?

能登 第1回目の開催のときに、車椅子を使った体の弱い女の子が会場に来てくれたのですが、1時間ほど観た後、介助をしていたお母さんが娘に「帰ろうか」と聞いたところ、「もう少し見ていく」と。そして夜のエンディングまで食い入るように観ていたそうです。祭を見終わった後に、「踊りから勇気をもらった。お母さん、わたし生きるよ、頑張るから」と。その言葉を聞いたお母さんは嬉しくて、我々に連絡をしてくれました。それから数年かけてリハビリに取り組み、なんと踊りのチームで祭に参加するまでに。「次の世代を担う若者に感動を」というのが目標だったので、これは忘れられないエピソードですね。

―継続して開催し続けられた要因は何だと考えられますか?

能登 私たちが祭を立ち上げた頃は「よさこいブーム」で、全国各地で踊りの祭が生まれましたが、淘汰されて今残っているのは数えるほど。それだけ継続するのは大変なことです。しかし私たちが提唱した「オールジャンルの踊りの祭典」は全国には例がなくオリジナリティがあったし、新潟の歴史に裏付けされた自由溢れる雰囲気を求めて、全国各地から新潟に集まってきてくれるのだと思います。

―コロナの影響も大きい分野だと思いますが。

能登 コロナ禍において、もちろん大きな影響を受けましたが、にいがた総おどりは絶えずその状況下でできる祭りの形を模索し、表現と感動の「場」を作り続けてきました。2020年はオンライン開催で24時間ライブ配信を行い、クラウドファンディングも活用して目標を上回る支援をいただき、乗り越えることができました。その後もオンライン配信も駆使し、歩みを止めることはありませんでしたが、参加していたチームの3分の1が消滅するなど、『文化とは脆弱なものだ』ということを痛感したこともまた事実です。しかし、その反面で強くもあり、新たに3分の1のチームが参加しました。今年はコロナ禍というエンターテインメントの危機を乗り越え、新たな一歩を踏み出そうと思っています。

 

今年も9月に行われる艶やかで迫力のある演舞にご期待ください。

―回を重ねてきて、この祭りは新潟にどのような影響を与えたと思いますか?

能登 おかげさまで、秋の風物詩イベントとして多くの皆さんに認知していただけるようになり、毎年、全国各地からたくさん参加していただける祭に成長しました。また、このイベントは若者たちの貴重な発表・挑戦の場になっていると実感しています。踊り子として参加することはもちろん、祭り当日はたくさんの学生ボランティアスタッフが運営を支え、一緒に祭りを作り上げます。若者の孤立が社会課題となっている中、踊りを通じてコミュニティを形成することは、若者が社会で活躍する際の手助けになるだけでなく、地域の活性化にも大きく寄与すると信じています。

―22回目を迎える、今年の注目ポイントはどこでしょうか?

能登 今年は過去最速のペースで全国から参加申し込みが殺到し、満員御礼になりました。それだけ演者の気持ちも盛り上がっています。昼間のチーム演舞はもちろん、フィナーレのスペシャルプログラムも連日趣向を凝らしており、見どころ満載です。

初日の9月16日は、やはり古町の6・7番町で行われる「新潟下駄総踊り行列」です。四日四晩踊り明かしたと言われる江戸時代の盆踊りを再現したもので、華やかな着物を身に纏った踊り子たちの姿は、まさに歴史的な絵巻物を思わせる迫力のある光景です。

17日の夜は参加チームの中から選ばれる3つの賞の授賞式やアーティスティックなプログラムの数々が見応え満点。最終日は飛び入り参加の踊り子も一緒に踊る下駄総踊り、そして観客も一緒に踊る「総踊り」で感動の最高潮を迎えます。

各日フィナーレに踊られる四部作「華鳥風月」は、日本の美しさや力強さを踊りで表現するにいがた総おどりオリジナル作品であり、全国から集った約300人の踊り子が30分近くにわたり演舞し、非常に高いクオリティを誇ります。ぜひご覧いただきたいですね。

感動は未来を担う若者を動かすエネルギーになる。

― 「にいがた総おどり」の他にも、後世に文化を継承するイベントを開催していますね。

能登 はい。「アート・ミックス・ジャパン」という毎年春に開催しているイベントで、能や狂言、落語、邦楽などの伝統芸能を気軽に観覧してもらうものです。若い世代に対して、日本の伝統芸能の素晴らしさと伝統文化の魅力を分かりやすく、そして楽しみながら伝えることを目指して開催しています。普遍的な美しさと度肝を抜かれる妙技を再発見し、後世に受け継ぐお手伝いができればと願っています。

―能登さんのチャレンジの原動力は、どこにあるのですか?

能登 「感動」ですね。高知のよさこいに感動した経験から私たちはにいがた総おどり祭を立ち上げました。感動が心を動かすことで、具体的な行動へとつながるのです。例えば、持続可能な開発目標(SDGs)は地域社会との連携が重要視され、地域の課題に取り組むことが強調されています。日本の伝統芸能もまた、地域のコミュニティと密接に関わりながら伝統を守ってきました。それは数百年前から感動を基に実践されてきたものです。私たちは踊りを通して感動を届け、未来を動かすエネルギーの一つになれればと願っています。

―踊りに参加する方や観客の皆さんに一言お願いします。

能登 「感動は人を動かす原動力になる」。それを信条として22年間やってきました。だから、踊ることで、観ることで、感動がある世の中を作るために私たちはこれからも頑張っていきます。心が動く瞬間に触れるために、ぜひ「にいがた総おどり」の会場へお越しください。

 

株式会社サイト(新潟総踊り祭実行委員会 事務局)
〒950-0088 新潟市中央区万代1-6-1
TEL:025-383-6688 / FAX:025-255-1333
https://sight.inc
https://www.soh-odori.net

株式会社サイトは、新潟総踊り実行委員会 事務局を務めるほか、アート・ミックス・ジャパン、ワールドダンスコンペティション等の文化イベントや祭の開催等を実施。それらの様々なプロジェクトを通して「感動」や「感性」が溢れる “新しいライフスタイル” を提供しています。

 

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