社会課題解決型学生ベンチャーを多面的にサポート。 開志専門職大学「創業支援センター」

2023.10.19 Thu

開志専門職大学では、在学生・卒業生の起業を多方面にサポートするために、「創業支援センター」を設置。外部の創業支援機関などと連携し、優れた事業計画を持つ支援対象の起業家に、専門家による助言と創業環境の提供などを行っています。

「創業支援センター」を設置した目的や背景、そして仕組みや成果などについて、さらには開志専門職大学の教育方針や輩出したい学生像などを開志専門職大学 創業支援センター長の福田稔さん(事業創造学部 准教授)に伺いました。

 

若者のベンチャーマインドを学内外の専門家が支援。

創業支援センターを設置されましたが、その目的や内容をお聞かせください。

福田 本学には4つの建学の精神があります。1.自学 2.挑戦  3.創造  4.貢献 です。 その2番目にある「挑戦」の場を提供するために、2022年に学内研究機関から分離改組して設置しました。学外の日本政策金融公庫や事業創造キャピタルなどと連携しながら創業を支援する機能を持ったセンターです。行政などが設置・運営する創業支援機関のように創業を奨励・あっせんするのではなく、本気の事業計画を策定支援することを通して経験知の蓄積やキャリアデザインなどについて総合的に支援することが目的で、あくまで高等教育の一環として運営しています。

どのような手順で創業支援活動をサポートしているのですか?

福田 まず本学が主催するビジネスアイデアコンテストの入賞者やその他実習などで頭角を現す優れた事業計画を持つ学生を認定する形で支援対象者を選抜。その後、専任教員を中心にメンター役となって起業家マインドを含めたサポートを行っていくとともに、学外の弁護士、公認会計士、税理士などの専門家による助言と創業環境の提供などを集中的に行います。また創業後の経営相談や情報共有といったアフターフォローにも責任を持って対応していきます。

実際に創業に向けて計画を進めている学生はいますか?

福田 事業創造学部の古津瑛陸さんは2年次(2022年)に、自身が代表となり「株式会社LacuS(ラコス)」を設立しました。彼は本学の1期生として入学し、ビジネスアイデアコンテストに出場し、グランプリを受賞。現在、国内初の高齢者に特化した完全栄養食ブランド『FOOZ』の事業化に向けて活動を進めています。具体的にはアイスクリームの商品開発で、高齢者食市場の中でアイスクリームは規模が小さく競合も少ないため、自分たちならではの価値あるプロダクトが作れると思ったから選んだそうです。また大学ベンチャー投資ファンド「開志エンジェルファンド1号」(運営:事業創造キャピタル株式会社)からの出資を受け、商品化に向けて取り組んでいます。

   

古津さんは、創業支援センターをはじめとした大学の環境についてどのように思っているのでしょうか?

福田 古津さんは高校時代に「20歳で起業、30代で社会に大きなインパクトを与える事業を立ち上げる」という志を立てて本学に入学してきました。彼に大学の印象を聞いたところ、「他の大学にはないリソースがある。例えば、業界のエキスパート教員や経営者と出会える環境。また、積極的に産官学連携を行っていることで、さまざまな学びを経験できています」と話してくれました。さらに彼は学内に「起業サークル」を立ち上げ、起業につながる各分野の講師を招いてレクチャーを受けるなど、自らが中心となり夢を追うためのコミュニティ活動を展開しています。

起業家精神は、社会・地域・企業に新しい価値を生み出す。

そもそも起業家精神とは何でしょうか。起業家に近年求められていることは何か教えてください。

福田 起業家精神(アントレプレナーシップ)とは「まわりと自分を幸せにするために、心を自由にして課題を発見し解決する考え方と行動」です。ビジネスですから収益をもたらしますが、近年は特に事業の目的を問われています。自社の当面の利益よりもSDGsや脱炭素など事業活動がもたらす社会へ、世界へ、地球への貢献に目を向けていくことが求められます。最近特に起業家に求められることは、そのような貢献ができる「いい人であること」です。いい人にはたくさんの多様な人が集まり、大きな知恵となり、ますます社会の役に立つビジネスができるようになります。

 

入学時に起業したいと思っている学生は何割くらいいますか?

福田 だいたい3割とみています。残りの7割の学生は起業を意識せず、一般企業(商品企画や広報)や公務員などへの就職を考えています。卒業後の進路は違えども、全員に身に着けて欲しいのは起業家精神(アントレプレナ-シップ)です。経営者マインドとリーダーシップを兼ね備えた人材は、社会・地域・企業で新たな価値を生み出してくれます。

 

起業家精神は、なぜ企業に就職しても大切なのでしょうか?

福田 企業内で新規事業を立ち上げる場合、ある意味で起業と同じなのです。これは講義でよく言う例えですが、「会社も新規事業も一台のビークル(乗り物)。プロジェクトという仲間で乗り込み、ビジネスモデルというエンジンを搭載し、方針というハンドルを付け、目標とするマップを作り、成功というゴールへと辿り着くためにしっかりとしたタイヤを付けて走ることが必要だ」と。社会課題を発見して解決へと走り抜くためには、起業家精神が欠かせないと思います。

活きた学びのカリキュラムで、社会での実践力を高める。

古津さんのような起業家精神を持った学生を育てる、独自の特徴があるそうですね。

福田 はい。いくつかありますが、その中でも「少人数による実践的な指導・サポート」は本学の大きな特徴です。1クラス40人以下の少人数制なので、教員との距離が近く、学生との対話が円滑にできます。疑問点があればその場で答えることも可能です。このように学生とのコミュニケーションを大切にした講義や実習に取り組んでいます。

 

実務家教員による現場を重視した指導も特徴のようですね。

福田 本学では専任教員の50%以上が高度な専門性と実践経験を持った実務家教員です。今まで培ってきた豊富な経験を学生に伝えています。さらには研究者教員による高度な知識や情報を学べるので、実践と理論をバランスよく修得できます。講義で得た学びを、実社会の現場で実践する機会となる臨地実務実習を在学中600時間以上行っています。

臨地実務実習で学生はどのような事を学ぶのでしょうか?

福田 はい。臨地実務実習は20単位以上を占める本学の特徴的な正課科目です。社会人・企業人に必要な心構えやマナー、課題発見力や課題解決力など、講義では得られない学びや手応えをビジネスの現場で直接体験し、実践力や応用力を身に付けることを目的に行っています。一般的なインターンシップは企業主導で期間は1週間程度ですが、大学と実習先企業等が協働して実施するこの実習は期間も3〜4か月と長期で、体験の広さと深さが違います。実際に企業のリアルな姿を見てプロフェショナルをイメージすることができるのが、いちばんの収穫ではないでしょうか。

 

地域の活性化に貢献して、幸せな人生を歩んでほしい。

全国に多くの専門職大学が開校しましたが、開志専門職大学ならではのポイントは?

福田 本学の建学の精神の4番目は「貢献」です。本学は唯一3学部ある総合型の専門職大学です。そのメリットを活かす取り組みも、他の大学と差別化を図れる本学の特徴であると考えています。その実現のために学部横断での講義をはじめとしたさまざまな取り組みが始まっています。地域の資源を新商品や新サービスに活用するための能力を身に付けた人材を輩出して、地域の活性化に貢献してまいります。

 

学生に対して期待することは。

福田 学生には「最終目標は幸せになること」と言っています。それはたとえば事業に成功して高級車に乗ることではなく、自分と周りの人を幸せにすることです。そのためには建学の精神の一つである「挑戦」、つまり指示待ち人間ではなく、自ら前に踏み出す勇気のある人間になってもらいたい。起業家精神を心に燈して社会に送り出したいと思っています。起業家精神は起業家や社長さんだけのものではありません。将来、会社・組織に勤める人も多いと思いますが、“すべての人は自分の人生の経営者”。ぜひこれからの人生でも起業家精神をもって働き、ぜひ幸せになってほしいですね。

開志専門職大学 創業支援センター

〒950-0914 新潟市中央区紫竹山6-3-5
TEL:025-240-8118 / FAX:025-240-8123

2020年4月、新潟市に開学。在学中600時間以上の長期企業内実習をはじめとする教育で、成長分野の高度な人材を育成する総合専門職大学です。事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部の3学部を設置し、実践的なカリキュラムを通じてビジネスの現場で必要な知識と応用力を身に付け、変化する社会で活躍できるプロフェッショナルを育成します。事業創造学部・情報学部は完成年度を迎え、1期生の就職内定が続々届いています。就職内定率は、事業創造学部93.7%、情報学部96.7%(10月17日時点)と、新設の大学ながら、高い就職実績となっています。

 

福田稔
開志専門職大学 創業支援センター長 事業創造学部 准教授(実務家教員)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。法政大学大学院 政策創造研究科修了 修士(政策学)。大学卒業後、中国電力(株)入社。電力直営の創業支援施設「SOHO国泰寺倶楽部」の立上げ。インキュベーションマネジャー(IM)となり、全国のIMと出会う。東京農工大学で大学発ベンチャー支援、新宿区立高田馬場創業支援センターの立上げ・施設長、広島県よろず支援拠点コーディネーター、広島県創業サポーターを歴任。多くの起業家、中小企業や大学発ベンチャーのイノベーション支援に取り組む。2016年(一社)日本イノベーションマネジャー協会設立、2020年から新潟の開志専門職大学で実務家教員として臨地実務実習や会社設立実習、イノベーション系科目の授業と学生の創業支援に関する相談や創業支援エコシステム構築にあたる。

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