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産官学と連携し、起業支援で地域を活性化。開業から10年で、300件を超える起業実績。
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長岡市の活性化を目的に2014年に開設された新潟県起業支援センターは、昨年で10周年を迎えました。これまでに、産官学の連携を通じて300件を超える起業支援と3,000件以上の相談対応を行ってきました。
今回、新潟県スタートアップ拠点「CLIP長岡」を運営する一般社団法人 新潟県起業支援センターの代表理事高橋秀明氏に、起業支援の過去・現在・未来についてお話を伺いました。
開業から10年、産官学の連携で多くの起業家を支援。
ー あらためてCLIP長岡の目的について教えてください。
高橋 新潟県全体の課題として、長年にわたり開業率の低さが指摘されています。現在も全国で45位と低く、かつては最下位だったことも。そうした開業率の低さに対して、長岡市は強い危機感を抱いていました。こうした状況のもと、NSGグループの地域活性化への取り組みやこれまでの実績を活かし、2014年に起業支援拠点として新潟県起業支援センターを開設しました。おかげさまで昨年10周年を迎えました。
ー 10年間を振り返って、どのような成果がありましたか。
高橋 開業した当初、長岡市にはほとんど起業支援拠点がありませんでした。その中で、10年間にわたり300件を超える起業支援と3,000件以上の相談対応を実施し、新潟県内でも突出した実績を築いています。この取り組みにより、長岡市は「起業家を支援する街」として認知され、周辺市町村からも注目されるようになりました。
ー 起業をする上で、長岡市を取り巻く環境はいかがですか。
高橋 長岡市には4つの大学と高専があり、それぞれが起業に直結する専門分野を持っています。例えば、長岡技術科学大学は工学、長岡造形大学はデザインとビジネスの融合に強みがあります。加えて、高専も高度な技術力を持つ人材を輩出しています。さらに、長岡にはものづくり産業が集積しており、技術力の高い企業が多い点も特徴です。こうした大学や企業との連携を強化するため、長岡市、長岡商工会議所、金融機関などと協力し「ながおか創業ネットワーク」を設立し、起業希望者を支援しています。
ー NaDeC(ナデック)についても教えてください。
高橋 NaDeC(ナデック)は、長岡市内の4つの大学と1つの高専を連携させ、そこに企業が持つ幅広い分野のリソースを融合させ、新産業の創出と人材育成を目指す取り組みです。この枠組みのもとで、学生向けの補助金制度を整備し、支援体制を強化しました。その結果、平成30年頃から学生起業家が増加し、新たな事業が次々と生まれています。例えば、長岡技術科学大学の学生が立ち上げたスタートアップでは、ロボットとAI技術を活用して農業分野の効率化・自動化を実現する事業を進めており、地域のものづくり企業との連携も進展しています。
資金調達、集客手法など、多方面から起業をサポート。
ー 起業前後で直面するのは、どのような課題ですか。
高橋 起業前後に直面する代表的な課題は、「資金」と「集客」です。資金面では、「開業資金がどれくらい必要か」「売上が安定するまでの資金繰りをどうするか」を事前に考えておくことが不可欠です。例えば、自己資金だけでなく、融資や補助金の活用も視野に入れる必要があります。一方で、集客に関しては、「店舗をオープンすれば自然にお客様が来るわけではない」という前提を理解し、ターゲットを明確にした上でマーケティング戦略を練ることが重要です。特に、SNSやウェブ広告などのデジタルマーケティングを活用するケースが増えており、起業家自身が基本的な知識を持つことが求められます。
こうした課題に対応するため、CLIP長岡では「起業スクール」を開催し、起業を目指す方の支援を行っています。このスクールでは、事業計画の立て方から資金調達の方法、マーケティング戦略の構築まで、実践的な知識を学べる場を提供しています。特に、金融機関の担当者やマーケティングの専門家を講師として招き、具体的な事例を交えながら指導を行う点が特徴です。これにより、起業希望者が準備段階から必要な知識を身につけ、スムーズに事業を立ち上げられるよう支援しています。
ー 起業支援プログラムがあるとお聞きしたのですが。
高橋 「リーンローンチパッドプログラム」という支援プログラムを運営しており、今年で6回目を迎えました。このプログラムでは、シリコンバレー生まれの新規事業創出方法を取り入れ、デザイン思考やリーンスタートアップ等、事業をゼロから実現するための手法を学ぶことができます。また、実際に成功している起業家から直接指導を受ける機会もあり、起業をより効率的に進められるよう支援しています。
学生や障がい者なども含め、多彩な起業家を後押し。
ー 最近の起業で印象に残っているケースはありますか。
高橋 特に印象に残っているのは、学生が開業したバーです。彼は飲食業の経験がほぼない状態からのスタートでしたが、私たちは「市内外のイベントに積極的に参加し、ネットワークを広げること」や「経営に必要な知識を学ぶこと」を勧めました。実際に、彼は様々なイベントに足を運び、飲食業界の人脈を築くとともに、経営に関する学びを深めていきました。そして、良い物件が見つかったタイミングでついに起業を決意しました。
しかし、開業時期がコロナ禍と重なり、厳しい試練に直面しました。それでも彼は諦めず、ファン作りに注力し、来店したお客さまとの関係を大切にすることでリピーターを増やしていきました。今では、学生起業の成功事例の一つとして注目されています。
ー その他にも特徴的な事例はありますでしょうか。
高橋 もう一つ印象的なのは、聴覚障がいを持つ方が開業した手話カフェです。彼は「手話で接客をするカフェを開きたい」という思いで起業スクールに参加しました。しかし、手話を活用したサービスは前例が少なく、「お客さまが集まるのか」「円滑な接客ができるのか」といった不安がありました。さらに、私たち自身も手話を理解していなかったため、どのようにサポートすればよいのか手探りの状態でした。
そこで、長岡市の協力を得て手話通訳者を迎え、起業スクールの講義内容やビジネスプラン作成をサポートしました。こうした支援のもと、彼は開業準備を進め、ついにカフェをオープンしました。現在では全国からお客さまが訪れるほどの人気店となっています。
ー 両者の成功の共通点は何でしょうか。
高橋 どちらの起業家も、最初は知識がほとんどない状態からのスタートでしたが、まずは周囲のアドバイスを素直に受け入れ、必要な知識を吸収していきました。そして、その学びを実践に移し、積極的に行動することで事業を軌道に乗せました。
さらに、彼らの成功には「なぜこの事業をするのか」という明確な目的意識が大きく影響しています。例えば、手話カフェのオーナーは「障がいのある人にも優しい街をつくりたい」という強い思いを持っており、その理念が多くの人の共感を生みました。このように、事業の背景にしっかりとしたビジョンがあることが、成功の大きな要因となっています。
小千谷市、見附市、出雲崎町など、周辺自治体と協力して支援を拡大。
ー NSGグループの他法人とは、どのような連携を図っていますか。
高橋 CLIP長岡の大きな強みの一つは、NSGグループ各法人との連携にあります。例えば、医療や福祉分野のスタートアップが生まれた場合、グループ内の医療・福祉機関と連携し、実証実験の場を提供することが可能です。このように、資金やアドバイスの提供だけでなく、グループ内のリソースを活用し、実証実験の機会を提供することで、起業家が成長しやすい環境を整えています。この点が、他の支援拠点と異なるCLIP長岡の強みです。
ー これからの展望について教えてください。
高橋 今後10年、20年先を見据え、起業をより身近な選択肢にすることを目指しています。現在、起業はまだ「特別な選択」と見なされがちですが、就職と並ぶ選択肢として定着させるために、成功事例を可視化し、起業の魅力をより多くの人に伝えることで、起業家の増加につなげたいと考えています。
ー 周辺地域との連携はどのように考えていますか。
高橋 長岡市だけでなく、小千谷市、見附市、出雲崎町などの周辺自治体と協力し、起業支援を拡大していきます。また、起業家同士がつながり、先輩起業家が次の世代を支援する「エコシステム」の形成も進めていきます。これにより、起業支援の担い手を増やし、持続的な支援の仕組みを構築することが重要だと考えています。

起業を支援することで地域の人口流出を防ぎ、新たな雇用を創出。
ー 起業を考える方へのメッセージはありますでしょうか。
高橋 「まずは行動すること」が大切です。いきなり大きなリスクを取るのではなく、小さく始め、早めに試行錯誤を重ねることが成功への第一歩となります。
また、失敗を恐れる必要はありません。計画的に進めれば、仮に事業がうまくいかなかった場合でも、学びを次のチャレンジに活かすことができます。
ー 起業は長岡地域の活性化に貢献できるでしょうか。
高橋 はい。起業の支援は、地域の人口流出を防ぎ、新たな雇用の創出につながると考えています。長岡市には、ものづくりをはじめとする多様な産業がありますが、今後は地域の魅力を最大限に活かし、より多くの人々が「起業」を現実的な選択肢として考えられるよう、環境整備を進めていきます。
一般社団法人 新潟県起業支援センター
自治体とも連携した地域密着の伴走型支援により、長岡を中心とした地域で起業したい方を全力で支援します。
起業家のための交流の場の提供や、メンターを配置し起業・創業の相談を行う新潟県が認定した民間スタートアップ支援拠点「CLIP長岡」を運営し、起業塾の企画運営や、事業内容や資金計画・販促ツールなどの起業相談を行っています。
〒940-0062 新潟県長岡市大手通2丁目2-6 ながおか市民センター地下1階
TEL:0258-94-5040 / FAX:0258-94-5041
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