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世界から69本の長編アニメがエントリー。「第3回新潟国際アニメーション映画祭」
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今年で第3回を迎える「新潟国際アニメーション映画祭」は、長編アニメーションの国際コンペティション部門を有する映画祭です。3月15日から20日まで、新潟市中心部の7会場をメインに、古町・万代などで関連イベントも開催されます。
過去2回の開催実績や、今年の注目点、新たなチャレンジ、そしてアカデミックな側面からの若手クリエーターの育成について、新潟国際アニメーション映画祭の事務局長であり、株式会社新潟アニメーションの代表取締役社長を務める内田 昌幸氏に話を伺いました。
過去2回の開催で映画関係者から評価され注目度が高まる。
― 新潟国際アニメーション映画祭の開催意図をお聞かせください。
内田 当映画祭の目的はイベントにとどまらず、新潟にアニメーション産業を根付かせ、マーケットを形成することです。長編アニメーションの上映を通じて、新たな市場を創出し、制作の活性化を促すことが重要だと考えています。また、世界的に見ると、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭は長編アニメーションを重視する映画祭として確立されています。私たちも、そのような国際的な映画祭を目指しており、新潟がアニメーション産業の新たな拠点となることを目指しています。
— 昨年の映画祭を振り返って成果はありましたか。
内田 第2回映画祭の大きな成果としては、コンペティション部門でノミネートされた作品のうち4本が日本国内での配給が決まりました。これは、日本国内の映画祭ではあまり例がないことです。映画祭を通じて作品の国内配給につながるという実績が生まれたことは、監督やプロデューサーにとって大きな魅力となるでしょう。今後、さらなる成功事例を生み出していきたいと考えています。
― 今年で第3回になり、応募作品数がさらに増加したようですね。
内田 はい。今年は昨年よりも約20作品多い69作品がエントリーされました。長編アニメーションに特化した国際コンペティションは世界的に見ても数が少なく、日本国内ではさらに限られています。そもそもアニメーションの制作には膨大な時間、人材、資金が必要で、新進気鋭の作家にとって長編制作は非常にハードルが高い。そのため、短編アニメーションを対象とした映画祭が主流となっています。そういった意味では、クリエーターにとって貴重な長編アニメーション映画祭として定着するはずです。
前回のノミネート作品4本が日本国内で配給される。
― 第1回から世界への発信を意識されていますね。
内田 はい。第1回の映画祭では、プレスリリースをカンヌ、東京、新潟で同時に発表しました。これは、単なるアニメ映画祭ではない映画祭としての位置づけを明確にするためです。その結果、映画祭の内容や審査員、作品の質の高さが世界の映画業界関係者から高く評価され、注目を集めることができました。
— それだけ世界から映画関係者が、ここ新潟に集まるということですね。
内田 そうですね。映画祭の開催によって、新潟の街の風景が変わりました。海外からの来場者が増え、飲食店や宿泊施設でも映画関係者の姿が目立つようになりました。映画祭は映画の上映だけでなく、地域の活性化にも貢献すると実感しました。
— 映画祭を通じた地域の観光・交流促進が期待できますね。
内田 はい。特に外国人の観客が増えたことで、会場近辺の飲食店や新潟市内の観光地の利用が活発になりました。映画祭期間中には、さまざまな国のアニメーション関係者が新潟に滞在し、交流する機会が増えています。これは、新潟が「アニメ都市」としてのブランドを確立するうえで、大きな一歩となりました。
国内外から若手クリエーターを招待して人材育成を図る。
— アカデミックな観点から、人材育成にも力を入れているとのことですが。
内田 将来有望な人材を新潟に招待し、この映画祭に来たプロデューサーや配給会社、制作会社と結び付けることで、新たな才能が新しい商業アニメーションの世界へ羽ばたいていく場になればと考えています。その試みは回を重ねるごとに進化しているのではないでしょうか。
— 具体的な育成内容を教えてください。
内田 「新潟アニメーションキャンプ」というプログラムを映画祭開催中の6日間にわたって実施しています。昨年は13カ国から700名以上の応募がありました。今年は対象地域を東アジアに絞り、6カ国から約60名が参加予定です。すでに業界で活躍している方や大学院で映像制作を研究している方など、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まります。
— 集まった若者にはどのようなプログラムが用意されているのでしょうか。
内田 映画祭の審査員やコンペティション作品の監督・プロデューサー、ジャーナリスト、批評家などを講師としてワークショップを行い、直接指導を受けられる機会を提供しています。形式的な授業ではなく、実践的な場で学べることが大きな特徴です。加えてフォーラムでは、アニメーションに関する研究機関とも連携し、新たな制作手法やビジネスモデルの開発を進めています。例えば、AI技術やモーションキャプチャーを取り入れたアニメーション制作など、最新のトレンドを活用したプログラムを提供する予定です。
— 地域の学生にもアニメ・マンガ教室を開いているそうですね。
内田 小学生向けのアニメ・マンガ体験教室を開催し、将来的なクリエーターの育成にも力を入れています。また、新潟市の教育機関と連携し、高校生や大学生向けのアニメーション教育を充実させる取り組みも進めています。このような教育・啓蒙活動は、以前からNSGグループが推進してきた、「アニメ・マンガの街 新潟」という街づくり構想にもつながる部分だと考えています。これからも当映画祭が、そのハブになる役目を果たしていければと考えています。
今回から映画関係者が気軽に集えるラウンジを設け、交流をサポートする。
— 今回からの新しい試みはありますでしょうか。
内田 そうですね。今年は、新潟日報メディアシップの展望フロアに夜景と世界の映画人との交流を楽しめる「NIIGATA SKY BAR」を設置し、関係者が気軽に交流できる場を提供します。ここでの出会いが、新たなプロジェクトにつながることを期待しています。
— 映画祭の魅力や、来場者に向けたメッセージをお願いします。
内田 新潟国際アニメーション映画祭では、日本ではなかなか観ることができない海外の長編アニメーション作品も多数上映します。世界には、日本とは異なるアニメーション表現が存在しており、普段はなかなか観られない作品を楽しめる貴重な機会です。前回の劇場総動員数は約8,000人。関連イベントも含めると約26,000人が参加しています。今回もぜひ多くの方に足を運んでいただき、新たなアニメーションの世界を体験してもらえればと思います。
新潟国際アニメーション映画祭
新潟国際アニメーション映画祭は、開志専門職大学のキャンパスを含む新潟市内7カ所が主な会場。6日間の期間中に、最大69作品の長編アニメーション作品が上映されるほか、シンポジウムなど祭典を盛り上げる多くのイベントが企画されています。
会期:2025年3月15日(土)~20日(木・祝) 毎年開催
https://niigata-iaff.net
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