アニメ制作者が安心して働けるよう人財育成に注力。 将来的には「Made in 新潟」のアニメを発信したい。

2024.08.22 Thu

日本のアニメーション業界は、少子化・人口減少に反して市場は拡大しています。また諸外国からの評価も高く、日本の成長産業として期待されています。新潟の地でアニメ制作の一翼を担っている株式会社新潟アニメーションは、NSGグループの専門学校、大学、東京の制作スタジオと連携し、優秀な人財の確保や育成に力を入れています。2014年に彩色を行う仕上げ専門の会社としてスタートしましたが、2021年から作画制作を請け負うようになったことで仕事の幅が広がり、人気作品の制作に多数参加し、注目を浴びています。

アニメ業界の現状や、専門学校、大学、東京の制作スタジオとの連携による人財育成の取り組み、課題や今後の抱負について、株式会社新潟アニメーションの代表取締役 内田 昌幸さんに伺いました。

数々の人気作品の制作に携わる。

— 株式会社新潟アニメーションは現在、人気作品の制作に多数携わっているそうですね。

内田 最近では、「転生したらスライムだった件」や「僕のヒーローアカデミア」などのアニメ作品の制作に参加しています。作画の仕事を引き受けたことを契機として、新潟アニメーションの社名がエンドクレジットに載る機会が増え、認知度が上がってきたと感じています。その効果か新潟県内外から相談が増え、新潟にアニメスタジオがあることを広く知ってもらえるようになりました。また先日、フランスで行われた世界で最も長い歴史を持つ、アヌシー国際アニメーション映画祭に視察に行ってきたのですが、そこで上映された日仏共同制作「化け猫あんずちゃん」の作画・仕上げにも関わっています。ここまで携わらせていただけるようになるまでには、色々な課題を乗り越える必要がありました。

— アニメ業界の現状を教えてください。

内田 年々アニメ業界やコンテンツ産業の市場規模は増えてきています。その一方で、人材が不足し、新規の仕事を受注する制作キャパシティが足りず、大手の元請けの制作会社だと、もう3年、4年先まで制作ラインが埋まってしまっています。人材確保と人材育成がアニメ業界全体の大きな課題となっています。

NSGグループのシナジー効果で念願の作画部を設立。

— 作画部を立ち上げた経緯を教えてください。

内田 アニメ制作会社の仕事は通常、作画と仕上げをセットで受注することがほとんどなのですが、弊社には立ち上げ後の数年間は作画のスタッフがいませんでした。創業当初は仕上げの仕事だけを行う会社でしたが、「いつかは作画部を作りたい」という思いはずっと持ち続けてきました。
作画部を立ち上げる上での最大の壁は、指導者の確保でしたが、2021年に私が代表を務めるタイミングでNSGグループの開志専門職大学が開学し、アニメ・マンガ学部の教員として着任した、現役のスーパーアニメーターたちの協力を得ることができました。そこで、新卒のスタッフを迎え入れ、アニメ・マンガ学部の教員から1年間みっちり指導してもらいました。また、大学側もアニメ・マンガ学部の臨地実務実習の受け入れ先を探していましたので、双方にとってプラスに働き、現在、仕上げ部で年間40人の実習を受け入れています。まさにNSGグループのシナジー効果ですね。

— 作画部のスタッフはどのような指導を受けたのでしょうか。

内田 最初の1年間は、開志専門職大学の先生お二人に指導してもらいました。お一人は動画検査のベテランで、アニメーターの仕事が絵を描くことではなく、キャラクターに芝居をさせることであることを指導いただきました。もうお一人はプロデューサーで、アニメ制作に向かう姿勢や作画における基本的な動作や芝居を表現するための技術指導をいただきました。

NSGグループの専門学校、大学と教育連携を図り、優秀な人財を確保。

— 新潟ではNSGグループの専門学校から多くの人財が輩出されていますね。

内田 はい。日本アニメ・マンガ専門学校をはじめ、毎年数多くの人財が育成され、輩出されています。来年3月には、開志専門職大学のアニメ・マンガ学部の第一期生も卒業します。私は以前、日本アニメ・マンガ専門学校の教員や学校責任者を務めていましたので、連携をスムーズに図れることも大きなメリットです。その他の専門学校、大学とも連携していますので、優秀な人財の確保に関してはかなりのアドバンテージを持てていると思っています。

— 現在の作画部のスタッフはどのような構成でしょうか。

内田 NSGグループの専門学校を卒業した5名で構成されています。アニメーターは、「動画」「第二原画」「原画」を経て「作画監督」になるには10年かかると言われているので、今はまだその過程です。作画の仕事を受注し始めてからは、今までよりも高いスキルが求められる仕事を受注できるようになりました。将来的には原画を描くことのできるレベルにスタッフには成長して欲しいと考えています。


(専門学校でスタッフが体験授業を指導している様子)

— NSGグループの大学・専門学校へ講師の派遣もしているそうですね。

内田 NSGグループの大学・専門学校5校と授業や実習などにおいて教育連携を図っています。アニメの彩色を行う仕上げなどの授業には弊社のスタッフを派遣していますし、私は主にマーケティングやプランニングに関する授業を担当しています。これらの連携が実を結び、優秀なアニメーターを輩出していく一助となれたら嬉しいですね。

東京の元請けスタジオと連携して新人を育成。

— 働きやすい環境を整える上で大切にしていることはなんですか。

内田 アニメーターの多くは、個人事業主として歩合制で働いており、「スキルアップ=収入増」となります。そのため、駆け出しのアニメーターには厳しい業界です。継続して働くことによってスキルも上がるので、弊社では完全歩合制を避け、固定費+出来高を支給することでスタッフが継続して働きやすい環境を整えています。また前述の通り、アニメ業界全体が人材不足に陥っているため、特に中堅アニメーターの確保が難しい状況です。そこでアニメ業界全体が人材育成に力を入れるようになっており、若手を正社員として雇用する会社も増えています。このように人材の獲得競争が激化する中で、弊社も東京の元請けスタジオと連携し、人財育成を進めています。

— どのようにして人財育成の連携を図っていますか。

内田 東京の元請けスタジオとしては、東京の制作会社に仕事を出そうにも、人材不足で発注が困難であるという現状があります。また、弊社はスタッフに様々な経験をしてもらいたいという課題があり、双方の課題解決に向けて、弊社と元請けスタジオが連携をすることになりました。このことで、元請けスタジオとしては、仕事を優先的に受けてくれる制作会社を確保できるメリットがあり、弊社としてもアニメ現場の最前線で実務を通して経験を積み、得たものを新潟のスタッフに還元できるメリットがあります。今はフルデジタルで制作していますから、元請けスタジオにとって発注先が地方でも問題ないわけです。

— 日々の業務の中での人財育成はどのようにしていますか。

内田 技術的な指導は、作画を納品した際に、遠隔で先方の動画検査や作画監督が弊社のスタッフに丁寧に修正点を指導してくれます。やはり実務を通して経験を積んでいくことは、人財育成をしていく上で、とても大切です。このような関係性を築くことができているのも、弊社のスタッフが真剣に取り組んでいる証だと思います。また、アニメーター・仕上げなど、アニメ制作従事者として仕事に向き合う姿勢や心構えなど、クリエイターとしての指導は、社内でキャリア面談を実施しています。

「Made in 新潟」のアニメを日本国内外に発信したい。

— 今後、力を入れたいことや新たに取り組んでいきたいことはありますか。

内田 新潟発のオリジナルアニメを制作したいと考えています。これは創業からのミッションです。現在、同じくNSGグループの(株)ガタケットは、漫画出版部門を設立し、原作の開発にも取り組んでいます。弊社がその原作を基にアニメを制作し、専門学校の学生・卒業生が声優をして…このように「Made in 新潟」の作品を発信したいですね。そして作品を通じて新潟に聖地を築き、観光促進にも貢献できればと思っています。

 

株式会社新潟アニメーション

新潟からアニメ-ション業界を牽引! 親身なスタッフ育成が私たちの自慢です。世界から注目を浴びる日本の映像表現「アニメ-ション」。新潟から業界を牽引する一翼を担うべく、制作スタッフのスキルアップを図る教育・指導にも力を注いでいます。作品制作に集中できる「安心して働ける環境づくり」こそ、観る人に感動を与える作品を生み出す原動力と考えています。

〒951-8061 新潟市中央区西堀通3番町791番地
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