最新デジタル機器を活用し選手の挑戦をサポート。 開志国際高等学校 スケートボード部

2024.08.01 Thu

開志国際高校スケートボード部と平野英功ヘッドコーチ

2014年4月に新潟県胎内市に開校した開志国際高校は、「医学科進学コース」「国際進学コース」「アスリートコース」「国際アスリートコース」の4つのコースを設置し、真の国際人、リーダー、スペシャリストを育てる、これまでの日本にはない全く新しいコンセプトの高等学校です。

今回は、開校と同時に創部したスノーボード部と、2017年に創部したスケートボード部についてお話を聞きました。

これらの部活動のヘッドコーチを務めるのは、平野英功さんです。平野ヘッドコーチは、北京オリンピックで金メダリストとなった平野歩夢選手や、同大会に出場した平野海祝選手、同校スノーボード部・スケートボード部平野英樹コーチの父で、3人の息子をスノーボーダーとして育て上げました。スケートボードのナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設にも指定されている、村上市スケートパークという日本最大規模の施設で選手育成に取り組んでいます。

2020年の東京オリンピックより正式種目に採用されたスケートボードに挑戦する生徒たちへの指導方針、デジタル機器を用いた練習方法、将来の目標についてお話を伺いました。

 

最新デジタル機器を駆使した合理的な指導や練習を実施。

— スノーボード部・スケートボード部が設立された経緯を聞かせてください。

平野 息子の平野歩夢が、2014年に開催されたソチオリンピックのスノーボード・ハーフパイプで銀メダルを獲得しました。それは彼が高校進学を控えた中学3年生の時のことです。今後も安心して夢を追える環境をいかに作るかを考えたときに、指導者・トレーナーと同様に、学校選びも重要だと考えました。そこで競技と勉学を両立できる全日制高校を探していたところ、2014年春に開志国際高等学校が開校するという話を耳にして入学を決め、合わせて「スノーボード部を作ってほしい」と学校に要望しました。その後、創部が決まり私がヘッドコーチを務めることになりました。スケートボードについては、以前よりスノーボード部の生徒がトレーニングとして取り組んでおりましたが、部としては2017年に正式に創部いたしました。

平野歩夢さんの父、開志国際高校スケートボード部でヘッドコーチを務める平野英功氏。日本スケートボーディング連盟副代表理事も兼任

 

— スケートボードは競技としての歴史は浅いと思いますが、どのような思いで指導にあたっていますか。

平野 スケートボードはストリートカルチャーから生まれたスポーツですし、オリンピックの正式競技になったのも2020年の東京オリンピックからです。そのため、練習方法などがまだ世界的に確立されていません。逆に言うと作りがいがあって面白いと感じています。そして進化している競技でもあるので、指導というより生徒と一緒に学んでいる感覚ですね。

 

— 選手を指導する上でのモットーはありますか。

平野 感覚的な指導に頼りがちなのがスポーツの指導ですが、選手には伝わりにくいケースが多い。以前は私も同じことをやっていましたからよくわかります。そして指導の際にどうしても感情が入り過ぎてしまった経験も。その反省も込めて感覚や感情ではなく、より合理的で科学的なアドバイスやトレーニングが必要だと考えています。

 

— どのような指導や練習をしているのですか。

平野 具体的なアドバイスをするために、デジタル機器を駆使した指導に重きを置いています。例えば、「足裏センサー」という機器を練習時に取り入れ、ジャンプや着地のときにかかる力を数値化して解析。その方が自分の滑りを科学的に確認することができ、効率的にレベルアップすることが可能です。この機器はヘッドコーチと兼業で副代表理事を務める日本スケートボーディング連盟で開発しました。部員はそんな最先端の機器を活用したトレーニングに励んでいます。

ジャンプの状態を数値化する足裏センサーデジタル機器を駆使した指導風景

現状に満足することなく、指導者として個人として新しい挑戦を。

— 現在、NSGグループの専門学校の指導にも関わっているそうですね。

平野 はい。妙高市にある国際スノーボード&スケートボード専門学校内にあるスケートパークに遠隔カメラを設置して、選手たちの動画をクラウドにアップするシステムを作りました。それを利用して学生に指導ができる環境づくりをしています。その動画を見ながら、どのように指導していくのかを、現地のトレーナーにコーチングしています。学校と施設とデジタル機材・ソフト。この3つが揃わないと実現しない、新しいコーチングスタイルです。現在、指導者不足も課題になっていますので、このコーチングスタイルが確立していけば、さらに選手の育成の幅が広がると思います。

 

— スケートボードの指導でチャレンジしたいことはありますか。

平野 確かにデジタル機器は今の練習には欠かせませんが、だからこそアナログ的なことも大切だと思います。今は昔より時が流れるのが早く感じられるような時代ですが、心身ともにゆとりがないと良いパフォーマンスはできません。そこでパークを出て自然に耳を傾けることも重要に。特にスノーボードは自然の中で行なう競技ですから。スケートボードだけではなく、これからは里山で植物や生物に触れ合うことをプログラムに取り入れようと考えています。そしてデジタルとアナログの融合などいろいろな幅を持った選手に育ってもらいたいですね。

開志国際高校スケートボード部員と平野英功ヘッドコーチ

 

スケートボードを入口に、生徒の未来の扉を開く指導を。

— 部員にスケートボードを通じて何を学んでもらいたいですか。

平野 3年間の練習や試合を経験して、いろんな可能性が見えてくるはずです。
選手たちがスケートボードに関わるさまざまな仕事を知り、実習を通じて自分の得意や好きなことを見つける機会を提供しています。
エクストリームスポーツの様々な種類を集めた大会「X GAMES」は、夏と冬の年2回開催されます。この大会の運営実習では、選手としての参加だけでなく、運営側の仕事も学び、多方面で活躍を目指す生徒をサポートしています。
例えば、「スケートボード×○○○○」といったように、スケートボードを通してやりたいこと、得意なことは生徒の数だけあります。いかにして自分にしかできないことを見つけるか。スケートボードは未来への入口。ぜひ可能性の扉を開いてもらいたいですね。

開志国際高校スケートボード部練習風景開志国際高校 2年生 甲斐穂澄選手
開志国際高校 2年生 甲斐穂澄選手

 

— 卒業後の進路に関してどのような指導をしていますか。

平野 今お話したように、高校時代にいろんな経験を積んで、卒業後にやりたいことを見つける。それはお金を払っても買えない“宝物”です。そんな未来につながる環境を作りたいと思っています。確かに世界一や金メダルのような大きな目標も大事に思いますが、技術の頂点だけではなく、経験の積重も大事にしてほしいと思っています。

 

— 結果だけに固執するのではなく、先を見据えた指導をしているということでしょうか。

平野 その通りです。卒業後、そしてアスリート引退後も続く長い人生を見据えて、上から目線ではなく、意見を交わしながら一緒に歩んでいきたい。そして、いろんな人がその子の夢を応援したくなるようなストーリーを作るのが、私の大切な仕事だと思っています。

 

NSGグループと連携を図りながら、留学生の受け入れを推進したい。

— NSGグループ内での連携も重要なポイントではないでしょうか。

平野 NSGグループのように、高校、専門学校、大学と一気通貫した教育環境があると、アスリートは安心して夢を追うことができます。スノーボードでいえば、各校で部活動があり、そしてチームアルビレックス、オールアルビレックス・スノーボードアカデミーといった、日本を代表するトップアスリートを目指すスノーボードチームもある。将来的にプロチームができれば、一つのグループの中で指導・普及・ビジネスというサイクルを回すことも可能です。こんな環境は、世界でも他にないのでは。そのような意味からも、今まで以上にNSGグループ全体で連携を深めたいと思っています。

平野英功ヘッドコーチインタビュー

 

— あらためてスケートボードをはじめとしたアーバンスポーツの魅力は何だと考えていますか。

平野 これまでのスポーツのように勝ち負けに固執するのではなく、まずベストのパフォーマンスを目指す。それが達成できたら喜ぶ。他の選手はライバルではなく、同じ競技をする仲間としてリスペクトする。そんな感じだと思います。新しいスポーツなので、教えることはいっぱいあるし、教えられることもいっぱいある。だから生徒と一緒に学びながら、一歩一歩ステップアップしていくのが私の責務だと思います。

 

— 今後、ヘッドコーチとしての目標やビジョンはありますか。

平野 1番目は「部員の成長」です。自分の将来を考えられる自立した若者に育っていくようにサポートしたいと思っています。2番目は「世界からの留学生の受け入れ」です。私たちが本拠地にしている村上市スケートパークには、東南アジア諸国、中国、韓国などのアスリートが練習に訪れています。今後は本校が留学生の受け皿となるよう、今まで以上に勉学と練習が両立できる環境を整えますので、安心して入学してもらいたいですね。

村上氏スケートパークと平野英功氏

開志国際高等学校
新潟県胎内市長橋上439-1
TEL:0254-44-3330 / FAX:0254-44-6663
https://kaishi-kokusai.ed.jp

2014年に全日制普通高校として開校。これまでの日本の普通高校にはない、全く新しい「医学科進学コース」「国際コース」「アスリートコース」の3つの特化したコースを設定し、特色ある教育活動を展開。大学進学では特色あるカリキュラムや少人数徹底指導により国立大学医学部医学科合格者の輩出。

スノーボード部・スケートボード部 在校中の主な大会実績
・X-Games Oslo ハーフパイプ 男子優勝(平成27年度)平野歩夢
・平昌オリンピック スノーボードハーフパイプ 女子8位 (平成29年度)冨田せな
・バートンUSオープン スノーボードハーフパイプ 女子3位(令和元年度)冨田るき
・第3回ユースオリンピック冬季大会 スノーボードハーフパイプ 男子銀メダル(令和元年度)平野海祝
・スケートボード世界選手権 ストリート男子10位(令和4年度)松本浬璃
・全日本スキー選手権 スノーボード競技 スノーボードクロス 女子2位 (令和5年度)石田莉緒

 

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