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インバウンド事業での起業を目指してUターン。
NSGグループが起業家を支援していることを知り、勉強会などに参加。
同グループの愛宕商事に入社し、インバウンド事業の社内ベンチャーを立ち上げる。
外国人観光客に湊町新潟の伝統文化と食を体験してもらうツアーを実施。
今後は会津・鶴岡との観光の広域連携を企画している。
そんな阿部さんの挑戦の日々を支えたものとは。
インバウンド事業での起業を目指して東京からUターン。
東京からUターンされましたが、その理由を聞かせてください。
新潟の大学を卒業後、東京の貿易会社に就職したのですが、いつかは新潟に戻り起業したいと思っていました。東京で働きながら、自分が情熱を持って取り組めることとは何か?と考えた結果、一つの答えが出ました。それは生まれ育った新潟の魅力を外国人旅行者に伝える「インバウンド事業」です。当時、新潟で同業者は少なかったのでフロンティアになろうと思いUターンしました。
帰郷されてから、NSGグループに入社された経緯は。
はじめは個人で起業するつもりで、起業コンテストなどに応募しながら準備を進めるうちに、NSGグループが起業家を支援していることを知ったのです。そこで連絡を取り何度か話を伺い、勉強会などに参加するうちに、同グループの愛宕商事が今後インバウンド事業に力を入れたいということで入社に至りました。
旅行事業部に所属されていますが、現在の仕事の内容を教えてもらえますか。
NSGグループの専門学校などの旅行手配や行政のプロポーザル案件、そして入社前から手掛けたかったインバウンド事業と幅広いですね。アイデアを練ること、人と会って打ち合わせをすること、部内のマネジメントなど、忙しいですが毎日充実しています。この仕事が好きなのでしょうね。まったく苦になりません。
コロナ禍を契機と捉え、社内ベンチャーを立ち上げる。
コロナ禍での旅行業は大きな影響があったのではないでしょうか。
その通りですが、逆にそれを契機と捉え、業務の幅を広げるように取り組みました。それは行政のインバウンドに関するプロポーザル案件へのトライや、コロナ明けを見据えたインバウンド事業の枠組み作りです。おかげで新たな観光ツアーを実施できましたし、念願であったインバウンド事業を社内ベンチャーとして立ち上げることができました。
社内ベンチャーの業務内容について教えていただけますか。
社内ベンチャーの名称を「EDGE OF NIIGATA」とし、「新潟市の伝統、歴史、文化を海外の人に知ってもらうこと」をコンセプトに2019年に活動を開始しました。具体的な事業内容は、着地型コンテンツと言われる体験型のツアーです。例えば湊町新潟の歴史を巡るウォーキングツアーや、米どころ新潟で作られた日本酒のテイスティングをはじめとした7種類のツアーを提供。2020年にはネイティブのスタッフが加わりツアー企画・営業・ガイドを担当してもらっています。“新潟でのインバウンド事業のフロンティアになりたい”という思いが叶い、ツアーを実施できたときは感無量でしたね。
今では地方都市のインバウンドは注目されていますが、設立当初の状況は。
東京や京都の知名度は高かったですが、新潟は独自の路線を見出せずに遅れをとっていました。大きな理由は情報発信の量の少なさでした。そこで新潟県と連携して「在留外国人と連携した魅力発信事業」を企画して、新潟県内外に住む外国の方に新潟のファンになってもらい、SNSで発信してもらう取り組みを実施。合わせて国内外の旅行会社にもセールスしました。特に注力したのが、インバウンド事業を一緒に力を合わせて盛り上げていく地域の仲間を増やすこと。そうしないとツアーも充実しませんし、外国の方も感動しないと思いました。
SNSでのアプローチや旅行会社へのセールスの効果はありましたか。
それらの成果が少しずつ現れはじめ、欧米やアジアから個人や団体のお客さまにお越しいただいています。24年4月以降は個人・団体ともにほぼ毎日インバウンド顧客対応と次の商品造成に追われている状況となっております。シンガポール・台湾・アメリカ・韓国からはスポーツツーリズム関連の相談もありコロナ禍で蒔いた種が実になっていると実感しています。
湊町新潟の歴史や文化の魅力を外国の方々にPR。
観光コンテンツを組み立てる上でどのようなことを大切にしていますか。
単にコンテンツを紹介するだけではなく、歴史や文化の背景を自分なりに理解することにこだわりました。そのために本を読んだり、博物館で調べたり、観光ガイドさんに案内をしてもらったりと、時間をかけて知識を得ました。次にそれを外国の方に伝えるためにはどうすればいいかを、当社のネイティブのスタッフと協議を重ねて落とし込んでいく。そしてモニターツアーを実施して反応を見てブラッシュアップする。その過程は大変でしたが、やりたいことをやれている充実感があったので、楽しみながら進められました。
新潟市の体験ツアーを企画してみて、外国の方にとってどこが人気でしたか。
新潟市の湊町の歴史と文化に特化したツアーとなっていますが、北前船の寄港地として栄えた「古町花街」が他の地域にはない特色ある文化として人気が高いです。なぜそれが生まれて、今でも根付いているかを紐といて伝えていますが、興味深く話を聞いてくれますね。あとは新潟の魚と日本酒を中心とした食も美味しいと好評です。
今後の新潟市のツアーに関する展望をお聞かせください。
今後は点より面で、この地域の観光をどのようにプロデュースするかが重要な課題なので、さらに文化や食を掘り下げ新たなコンテンツを開発しようと考えています。また違う切り口でいえば、新潟市は古くから「潟のまち」でもあります。「鳥屋野潟」や「佐潟」、「福島潟」など、潟の暮らし・文化に焦点を当てることにも取り組みたいですね。
チャレンジングな社風が新しい事業を生み出す源。
インバウンドといった時代を見据えた事業に取り組めた理由はどこにあるのでしょうか。
愛宕商事に入社して感じたのは、「会社をより良くしていこう、新しい風を吹かせよう」という前向きな雰囲気です。それは社長を中心とした会社の考え方が、社員に浸透しているからだと思います。そのような社風が好きですし、伸び伸びと仕事ができています。
愛宕商事の社員を一言で表すと、どのような言葉になりますか。
「知性と遊び心を持った人々」でしょうか。しっかりとした理論と分析をベースに、余裕というか遊び心がある。それらがないと新しい一歩は踏み出せないと思います。各部署を見渡すと、そういう人が多いこともチャレンジングな社風を作り出しているのではないでしょうか。
社員はどのような思いで仕事に取り組んでいますか。
地域商社として、「新潟の経済を回す」という思いで仕事に取り組もう。そのような話を社員同士でしています。また20〜30代の若手・中堅社員は、「自分の手で新しい企業文化を作っていこう」という気概がありますね。私もその一人として、これからも新しいことに挑戦したいと思っています。
事業の充実・発展を目指して、次の課題に取り組む。
インバウンド事業の新しい展開で何か考えていることはありますか。
新潟・会津・鶴岡の3都市を連携させたインバウンド向けのコンテンツの開発を考えています。3都市には独自の魅力があるので、それらを巡る旅をアピールしたいですね。例えば、新潟は湊町のお座敷料理、会津は武家料理、鶴岡は精進料理といった保存食や発酵に関わる食文化が残っています。そのような食の楽しさと歴史文化を合わせたルートをどうやって海外へ発信していくか。それが今年から来年以降にかけてのミッションです。
「EDGE OF NIIGATA」に関して、これから計画していることはありますか。
これはまだ夢ですが、古町花街の町屋を改修してゲストハウスを造りたいと思っています。今までは市内を観光して夜には終了というスケジュールでしたが、ナイトタイムエコノミーにつなげていくためにもゲストハウスは有効です。新潟の歴史を感じる宿から古町に繰り出して、飲食店で新潟の食や酒を堪能して、芸妓さんとのお座敷遊びを体験する。そんな新しい仕組みを作りたいですね。
今後のキャリアビジョンはどのようにイメージしていますか。
まずは「EDGE OF NIIGATA」の代表として、事業規模を大きくして、観光を通して新潟を盛り上げることが目標です。そして将来的には、海外展開に取り組みたいですね。現在は専門学校などで留学生を受け入れていますが、逆に現地に学校を設立したり、諸外国も高齢化が深刻になっていっているので医療介護の施設を立ち上げたり。今まで培ったNSGグループのノウハウを海外で活かせる可能性は十分あると思います。何年後になるかわかりませんが、志を高く持って挑戦を続けたいですね。
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