老舗ホテルの伝統を未来へ~次世代につなぐ学びと挑戦。

株式会社イタリア軒 / 山田 伸吾
2025.04.11 Fri
PROFILE
山田 伸吾
株式会社イタリア軒 営業企画部 部長 150周年事業担当部長
新潟市出身。NSGグループのアップル外語観光カレッジ(現 国際外語・観光・エアライン専門学校)トラベル科卒業。1998年に株式会社イタリア軒入社。サービス、営業、宿泊フロントを経て、現在は営業企画部の部長として新商品開発やイベント企画などを担当。ホテルイタリア軒創業150周年事業の担当部長を務めた。
入社後、宴会等の接客サービスを担当し、接客の基礎を学ぶ。
その後、営業部門へ異動し、新規顧客の開拓に尽力。
顧客との信頼関係を築きながら、事業の発展に貢献する。
営業企画部では、ホテルイタリア軒のブランド価値向上に取り組む。
ホテルイタリア軒創業150周年事業では、記念式典や広報、商品開発を担当。
次の50年、100年を見据え、ホテルイタリア軒のさらなる発展を目指す。
マネジメントやリーダーシップなどについての学びを深め、さらなる成長を志す。
そんな進化を続ける山田さんの次なる挑戦は。

現場スタッフの意見を取り入れた多彩な企画を立案。

営業企画部の仕事内容について教えてください。

宿泊・宴会・レストランの3本柱を軸に、企画立案を担当しています。例えば、新たな宿泊プランを企画する際は、フロント、調理、レストランなど関係する現場の意見も取り入れお客様ニーズに沿ったプランを作ります。また、社内スタッフと連携する際は自ら各部署に足を運び、コミュニケーションを密に取ることを心がけています。

最近は、特に食の魅力を打ち出されていますね。

はい。創業150周年事業を機にイタリア軒ブランドを見つめなおし、原点である「食」に力を入れています。料理長とも密にコミュニケーションを取りながら、新しい食のイベントを企画・実施しています。加えて、宴会やレストラン部門では、季節限定メニューや特別フェアの企画に注力しています。新潟ならではの食の価値をどう提供するかという視点を意識しています。

地域の特色を活かした新商品開発にも積極的ですね。

地域の老舗企業と連携し、地域の特色を活かした商品開発を進めています。例えば、江戸時代の明和4年(1767年)創業の今代司酒造は蔵敷地内にある創業家の屋敷を活用して会席ランチ事業を始めましたが、そこでホテルイタリア軒が新潟県産の食材を使ったこだわりの会席ランチを提供しています。さらには、明治26年(1893年)創業の食品加工販売会社の小川屋とは、ホテルイタリア軒のカレーと組み合わせた「咖喱(カレー)なる肉味噌』の商品開発を行い、3月に販売開始したところです。NSGグループ内外の企業や新潟県産の食材とのコラボレーションを通じて、当社のブランド価値を高めるとともに、新潟の魅力を発信できるよう努力しています。

企画をする上で大切にしていることは何ですか。

時代の変化に伴う人々の嗜好の変化をとらえることが重要ですし、国内外、業界にかかわらずトレンドを把握していることも必要だと思います。例えば、ディナーショーなどを企画する際には、エンターテイメント業界の最新のトレンドや人気アーティストの情報が必要です。今の流行やターゲット層、イベントの集客数などを考えて慎重に分析しながら、最も効果的なプランを考えています。

様々な経験を通してやりがいを実感。

改めてホテルスタッフとしての歩みを振り返っていただけますか。

営業をはじめ多くの部署で、さまざまな経験をさせてもらいました。入社当時は、宴会などの接客サービスを担当したのですが、最初は慣れずに苦労しました。同僚は私と同じくNSGグループのアップル外語観光カレッジ(現 国際外語・観光・エアライン専門学校)ホテル科出身が多く、サービスの基礎が身についていましたが、私は学科が違いました。私の配膳サービスの技術が上達するように、仕事が終わってから同僚に教えてもらったことを覚えています。親身になってくれた同僚は、本当に頼りになりました。

その後は長く営業に携わってこられましたね。

はい。営業部門に配属され、当初は新規顧客開拓が主な仕事でした。経験がなかったので、はじめは手探り状態でした。特に印象に残っているのは、ある企業に足繁く通い続け、新規の契約をいただけたことです。そのときに、仕事以外の話もすることでお互いの人となりを知り、コミュニケーションの機会を増やして信頼関係を構築することの重要性を学びました。そして、本音での対話を通してお客様が心から求めているものを理解し、それに合った最適な提案をすることが大切だと実感しました。

今でもそのお客様から直接のご指名で予約や相談の連絡をいただきます。このように、長くお付き合いしていただける信頼関係を築けたことは、本当に営業冥利に尽きますね。

歴史と伝統を次世代へつなぐ。

創業150周年事業を担当して、どのように企画に取り組んだのですか。

創業150周年を迎えるに当たって創業の原点に立ち返り、「オーベルジュ」「ガストロノミー」「ラグジュアリー」の3つを柱とした新しいホスピタリティを設定し、それらを提供していくことをコンセプトとしました。伝統と歴史を未来へ継承するために、次の50年、100年に向けてつなげていくことを意識しました。そのために、各部署からメンバーを招集してプロジェクトチームを立ち上げ、2年の歳月をかけてプランを組み立てて、歴史展示室の設置や小説「イタリア軒物語」の発刊、レトルト商品「伝統の洋食シリーズ」の発売等の事業を行いました。他の業務と並行して行ったので大変でしたが、非常にやりがいのある取り組みでした。

記念式典の開催に当たって苦労された点はありましたか。

創業150周年という大きな節目に相応しい記念式典とするため、ホテルイタリア軒のルーツであるイタリアを象徴する存在として駐日イタリア大使をご招待したいと考えました。新潟県庁に協力を仰ぎ、関係者と調整を重ねました。イタリア大使館を訪問し、直接大使にお会いして記念式典にご招待するという経験もできました。150周年というホテルイタリア軒にとって非常に重要なイベントでしたので不安もありましたが、式典当日には300人以上の方々に出席していただき、無事執り行うことができました。ホテルイタリア軒の伝統と革新を皆さんに実感いただく場を設けることが出来て、非常に嬉しく思います。


(創業150周年を記念して創設した歴史展示室)

創業150周年事業が社員の皆さんに与えた影響は。

社員一同、150年の歴史を改めて振り返ることでホテルイタリア軒のアイデンティティを再確認し、他部署との連携が強まり、一体感が深まりました。これからも、ホテルイタリア軒のDNAを今後イタリア軒の伝統を守っていく社員たちも含め末永く受け継いでいきたいですね。

伝統を守りながらも挑戦を続けるホテルイタリア軒。

ホテルイタリア軒を語る上で、美味しい料理も欠かせませんね。

創業150周年を機に、あらためて昔からあるメニューを見直し、魅力を発信しています。特に、長年ご愛顧いただいているミートソースやハヤシライスは、お客様が「この味を楽しみに訪れる」とおっしゃるほどに支持いただいています。また、「至高の饗宴」というシェフ厳選の旬の食材や新潟県産の食材を使用した特別コースをご用意し、ブランド価値の向上に努めています。

他にも新しい取り組みはありますか。

訪日外国人旅行者の増加を見据え、NSGグループの愛宕商事(株)とも連携して、古町芸妓、佐渡金山などの旅行プランの充実を図っているところです。また、新潟県の観光協会と一緒にキャラバンにも参加しました。「新潟に来たら、ホテルイタリア軒に泊まりたい」と思ってもらうために、国内だけでなくインバウンド需要への対応もより強化したいと思います。

学び続けてホテルイタリア軒の発展に貢献したい。

これから挑戦したいことは何でしょうか。

NSGグループにはさまざまな研修の機会があり、経営に必要な知識やスキルを学べる環境が整っています。特に、マネジメント力やリーダーシップについては、まだまだ自分には足りない部分があると感じているので、自発的に学びの機会を増やしていきたいと思います。

NSGグループの「次世代経営人材育成制度」に参加されているそうですね。

本当に貴重な経験でした。経営リテラシーの習得、経営意識の醸成などを目的として行われる2年がかりの研修プログラムで、法人の垣根を超えたメンバーとともに学び、気づきや学びを共有し、お互いを高め合うことで視野が広がりました。今でも当時のメンバーとは良い関係を築けています。これからも連携しながら、ともに新しいことに挑戦をし続けたいと思います。

今後の抱負について教えてください。

知識と経験をより一層積み重ね、人とのつながりを大切にしながら、ホテルイタリア軒のさらなる発展に貢献したいと思います。そして、150年の歴史を未来へつなぐために、変えるべきものを変え、守るべきものは大切にしながら、新たな時代を築いていきます。

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