- What's NSG
- チャレンジ
地方大学サッカー部のゼロからの挑戦。 目指すは大学日本一。
北信越大学サッカーリーグ1部に所属する新潟医療福祉大学男子サッカー部。2014年に佐熊裕和監督が就任して以来、次第に力を付け、昨年度の全日本大学サッカー選手権大会では準優勝に輝きました。佐熊監督は桐光学園高校サッカー部を強豪校に育て上げ、また元日本代表の中村俊輔選手をはじめ、50名以上のJリーガーの育成に関わった指導者でいらっしゃいます。
地方の新鋭チームをどのような方針で指導し、全国に導いたのか、また大学やNSGグループとの連携などについて佐熊監督に伺いました。
選手の長所を伸ばして、輝かせる。
― 全国規模の大会で好成績を残していますが、指導ではどのような事を大切にされていますか?
佐熊 長所を見つけながら時間をかけて伸ばし、4年後にどう輝くかという事を大切にしいています。私が以前監督を務めていた桐光学園も、就任当時は無名校だったのですが同じ考え方で指導をしてきました。教え子の中にも日本代表で活躍した選手も、入学当時は細身で足が遅かったけれど、テクニックはピカイチ。だから、その良さに磨き続けた結果、プロへ進めました。同じように高校時代は無名な選手でも本学で花を咲かす選手もたくさんいます。
― 以前の高校生への指導と大学生を指導する上で違いはありますか?
佐熊 高校生とは違い大学生の指導では、教えすぎないようにしています。細部まで指導すると、自分の頭で考える機会を失ってしまいます。それでは大きく成長できません。レベルが上がれば上がるほど、できるだけ教える事は少なくしてヒントを与え、自分で考える割合を高める。それが長所を伸ばす事につながると思います。
―短所を改善するのではなく、長所を伸ばす事にこだわっているのですね。
佐熊 例えば守備は苦手でも攻撃が得意な選手は、長所に磨きをかけた方が成長します。自分の武器に気づき、より前向きにトレーニングに励むようになります。大学生はまだ成長期なのでたった3週間で劇的に変わるケースもあり、指導者側が驚くほどです。長所を伸ばすことで短所が薄れると考えています。
チーム内に競争心を植え付け、人間力の向上にも力を入れる。
― なぜ高校の監督からプロの監督、そして大学の監督へと新しい道を選んで来たのですか?
佐熊 50歳になるときに新たなチャレンジをしようと思い、プロを指導できる日本サッカー協会公認S級ライセンスを取得し、中国のプロチームの監督を1年半務めました。帰国した折に、当時、新潟医療福祉大学男子サッカー部の強化にあたっていた方から熱心に誘っていただきました。他の大学のサッカー部とは違い、J1リーグのアルビレックス新潟との協力関係に興味があったので、新たなチャレンジとしてお引き受けしました。
― 昨年度はインカレで決勝まで進みましたが、強いチームを作る為に心がけているポイントは?
佐熊 選手たちにいかに競争意識を持たせるかです。当クラブは4つのカテゴリーに分けていますが、実力差はほとんどありません。大会でAチームとBチームが対戦し、Bチームが勝ちあがることもあります。毎週チーム内でトレーニングマッチを行ない、調子が良かった選手は上のカテゴリーの試合に起用します。逆に言えば、少しでもサボると下のカテゴリーに落ちるわけです。このように個々の選手が切磋琢磨することで、チーム全体としてもレベルアップに繋がると思っています。
― サッカー以外にも学生たちに伝えていることはありますか?
佐熊 サッカー選手である以前に、人として日常の基本を大切にできる人間性を培ってほしいですね。基本的な挨拶や礼儀などを徹底して指導しています。それがしっかりできないと、プロに進んでも一般企業に就職しても活躍できません。サッカーを通じて、人として当たり前のことを当たり前にできる人になってほしいですね。
選手もスタッフも高いレベルを目指して切磋琢磨。
― Jリーグのチームと練習試合をするケースが多いようですね。
佐熊 はい。私たちが練習する隣のグラウンドでアルビレックス新潟が日々練習しており、頻繁に練習試合をさせていただいています。そのほかにもJ1・J2のチームとの練習試合の為に遠征して、貴重な経験を積み重ねています。最初の頃は、相手は格上のプロで勝てなくても内容が良ければと思っていました。しかし勝とうという強い気持ちで試合に臨むことは大切ですし、勝つことでしか得られないものもある。だから学生が成長するためにも勝負にこだわった指導に努めています。
―レベルの高い相手との試合は選手たちにとって、どのような刺激になりますか?
佐熊 最初のうちは学生も相手がプロだから怖気づくこともありましたが、試合を経験するうちに気持ちで負けないようになり、良い勝負ができるようになりました。プロと戦い互角に渡り合うことで、自信に繋がっていると思います。またプロの選手を肌で感じることで、刺激になり、「プロサッカー選手になりたい」という思いをさらに強める選手もいますね。
― クラブを支えるコーチやマネージャーの役割も大切だと思いますが。
佐熊 それはもちろんです。各カテゴリーに桐光学園サッカー部の卒業生や本学のOBがコーチにあたり、各選手を成長させるアドバイスやトレーニングを行ってくれています。また学生のトレーナーや主務・マネージャーの頑張りもチームには不可欠です。昨年はJリーグやWEリーグのトレーナーになった卒業生もいました。スタッフも本気でプロを目指しているのが、当クラブの特徴だと言えます。
大学の各学部と連携し、選手を多方面からサポート。
―医療系総合大学だからこその他大学にはない強みとは?
佐熊 はい。新潟医療福祉大学は全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部15学科の医療系総合大学です。この医療系総合大学というメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。さらに、スポーツ系学科を有する本学ならではの環境を活かし、「スポーツ」×「医療」「リハビリ」「栄養」など、スポーツと融合した学びを展開しています。治療もそうですが、各学科と連携して、ケガを未然に防ぐことが可能です。例えば、筋肉に違和感のある選手がいた場合、検査の結果をもとにトレーニングの内容を指導してもらえます。また「鍼灸健康学科」が新設されたので疲労回復に活用させてもらっています。さらには食事の栄養面は「健康栄養学科」の先生たちからアドバイスもいただいています。学内にそれらの研究室が揃っていますので、学生は授業の合間などに検査や相談に行けます。そういった意味でも恵まれた環境です。
―サッカー部の監督だけではなく、健康スポーツ学科の教授も務めていらっしゃるそうですね。
佐熊 他の学科の先生方との交流を通じてスポーツを多角的に考えることができています。またスポーツマネジメントの話を、その分野の専門の先生から聞くこともできました。教授という教える立場ですが、指導者として成長できる環境だとも感じています。
産学連携で総合的に選手をサポート、目指すは大学日本一。
― サッカーに集中できる環境とは
佐熊プロと同等の環境で人工芝のグランド3面、天然芝3面、そして隣にはクラブハウスもあるのでトレーニングルームも充実しています。隣にはアルビレックス新潟がいつも練習しているので、日々選手たちも刺激をもらっていますね。
― NSGグループの法人と連携はありますか??
佐熊 怪我が発生した場合は新潟リハビリテーション病院ですぐ治療していただけますし、リハビリに関しては同病院併設のメディカルフィットネス“ロコパーク”で選手に合わせたメニューでトレーニングできます。このような環境が揃っている大学は珍しいので、選手たちも安心してプレーができていると思います。また新潟リハビリテーション病院の関連法人の一般社団法人アスリートサポート新潟からトレーナー派遣もしていただいています。トレーナーの方が日々の練習のケアをはじめ、トップチームの遠征や試合にも帯同していただいています。選手はもちろん、トレーナーを目指す学生の学びの機会にもなっています。
― 最後に今後の目標をお聞かせください。
佐熊 「目指すは大学日本一」。これは毎年言っている目標ですが、そこは変わることなく進めていきたいです「地方大学はいいサッカーをするが結果が出せない」と言われることもありますが、地方大学でも環境が整えば勝てるはずです。医療系総合大学の強みを活かして、結果にこだわって挑戦していきたいです。
もう一つは、「プロ選手の育成」です。新潟医療福祉大学から現在12名のプロ選手を輩出しています。しかし、全員がプロになれるわけではないので、社会に出て必要な人間力が身に付くような指導もぶれずにやっていこうと思います。これからも学生の将来を見据えて、スタッフ全員が一丸となってサポートしていきます。
【新潟医療福祉大学男子サッカー部】
2005年に創部。アルビレックス新潟と連携を図り、ふだんは新潟聖籠スポーツセンターアルビレッジのアルビレックス新潟専用練習場に隣接するピッチで練習を行っています。北信越大学サッカーリーグは6連覇することができ、2022年度のインカレでは準優勝することができました。4チーム体制で、各カテゴリー毎にスタッフによる熱心かつきめ細かい指導で、競技力はもちろん規律や礼儀など学生アスリートとしての人間形成を支援しています。
新潟医療福祉大学
〒950-3198 新潟市北区島見町1398番地
TEL・FAX:025-257-4763
https://www.footballnavi.jp/nuhw
佐熊裕和
2013年3月、27年間務めた桐光学園高校の監督を退職し、(公財)日本サッカー協会公認S級コーチの資格を取得。中国の梅縣客家足球倶楽部にてプロの指導者としてスタート。2014年に帰国し、新潟医療福祉大学男子サッカー部の監督に就任。現在、北信越大学リーグ6連覇・天皇杯7年連続出場・インカレ6年連続出場・総理大臣杯5回出場の成績を残しています。またこれまでに50名以上のJリーガーを輩出。2022年、新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科教授に就任。