2つのカメラと複数のAIによる画期的なオンライン試験システム「スマート入試」で公平・公正な試験を。

2023.10.30 Mon

ビジネス能力・技能に関する認定試験を開発・主催する(株)サーティファイでは、創業以来40年以上の経験やノウハウを活かし、リモート環境下でも公平・公正に試験を実施できる同社独自のオンライン試験システム「スマート入試」を開発、提供しています。

開発の経緯や苦労、また今後チャレンジしたい取り組みなどに関して、(株)サーティファイ ビジネスディベロップメント部 部長の蛭子拓夫さんに伺いました。

2つのカメラとAIで高度な試験監視を実現。

― オンライン試験システム「スマート入試」とはどのようなシステムなのでしょうか。

蛭子 「スマート入試」は2021年に当社が開発・リリースした、リモートによる入学試験や入社試験、昇進・昇格試験の実施を可能とするオンライン試験システムです。特徴は、2つの監視カメラを使うことで不正の抑止力と不正検出精度を高めた試験監視システム。スマートフォンやPC、タブレットなど一般的な機器を活用してのシステムとしては、世界最高水準の試験監視システムだと自負しています。その理由は、パソコンのカメラに加えてスマートフォンのカメラをサブカメラとして利用することで、多くの不正の温床となっているパソコン画面やパソコンカメラの死角をカバーできるからです。

― 仕組みとしてはフィジカルな発想ですね。

蛭子 おっしゃる通りです。ただ、2つのカメラで監視するだけではなく、取得した画像データや音声データをいくつものAIで解析して、禁止行為を検知しているんですよ。例えば第三者と入れ替わった場合本人認証AIによって直ちに感知できますし、視覚的・聴覚的な協力を得たりしていないかどうかも視線監視AIや音声検出AIなどで感知できます。もちろん多言語にも対応。このようなフィジカルとデジタルの融合が、当システムの最大の特徴です。

公正性を突き詰めた結果、2つ目のカメラという発想に。

― このシステムの開発に至った経緯を教えてください。

蛭子 創業以来40年にわたり、私たちは検定事業を手がけてきました。ただし、全国各地に試験会場を設けることが難しいため、受験を希望しても受験できない方々も少なからずいらっしゃいました。これでは機会の公平性が欠けていると感じ、本当に申し訳なく思っておりました。ですので、オンライン試験の開発は私たちの長年の悲願でした。
そういった思いをベースにコロナ禍を経て、社会におけるオンライン試験の必要性が一段と高まり、その結果、開発が一気に加速したというのが経緯です。

― なぜいち早く開発に成功できたのだと思いますか?

蛭子 着手当時は主催者・受験者のユーザービリティを重視して、パソコン搭載の1つのカメラとAIのみによるシステムを構築しようとする動きが一般的でした。しかし、それだけではなかなか全ての不正を防ぐことができませんでした。例えばPCカメラの死角でスマートフォンを操作することで簡単に生成AIアプリを利用したカンニングができてしまいます。また、受験者の画面を監視システムの画面共有機能で監視していてもちょっとしたテクニックがあれば突破できてしまいます。
私たちはまずどうしたら不正が起こるのか、そのパターンを徹底して洗い出しました。その結果、1つのカメラだけでは到底無理だ、2つ目のカメラがないと不正を防ぐことができないという結論に達しました。日頃から検定事業でお世話になっている全国の教育機関からのフィードバックでも、オンライン試験への移行を検討する際、不正行為を防ぐことが最大の課題であり、これがクリアできない限りオンライン試験の実施に踏み切ることができないとの声を多数いただいておりました。また、個人受験者向けのアンケートでも、オンライン試験への移行にあたり最も望まれることが「通信や機器トラブル時の救済」でなく「万全の不正対策」であることが明らかとなりました。これらのことから、私たちは何よりも公正性を最重視するに至りました。
ですので、ここまで開発できたのは教えてくれた皆さんのおかげです。

スマホをディスプレイと平行にして操作することで有人監視でも視線推定AIでも検知できない

 

コロナで注目度が高まり、新しい試験スタイルとして定着。

― コロナ禍で世間がオンラインに慣れたことが、このシステムの追い風になったのでしょうか?

蛭子 受験者のアンケート結果を見ると、コロナ禍では会場へ出向き大勢の中で試験を受けるより、在宅でのオンライン試験の方が安心できるとの声が多く見られました。一方でコロナ禍が落ち着いて時間が経つと、オンライン試験に対するニーズが低下していくのではないかと懸念していましたが、そんな事はありませんでした。コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスの観点からもオンライン試験のニーズは定着していることが伺えます。
また主催者側にとっても様々な事情で会場へ赴くことができない人たちへの合理的配慮や、多様性を重視し、全国どの地域の方々にも平等に学習機会を提供することを目指す教育機関などが、オンライン試験の導入に舵を切り始めています。SDGs目標4「質の高い教育をすべての人々に」を確実に実現するためにも、当社のシステムは今後さらに重要な役割を果たしていくはずです。

― 場所を選ばず受験できるということで、海外からの受験にも対応しているのでしょうか。

蛭子 はい。例えば今回のコロナ禍のような状況になった場合でも、日本への入国規制に関係なく受験が可能です。多くの大学が世界に目を向けて受験生を増やす傾向にありますので、そうなると当社のシステムが大きな役割を担います。一例としましては、2023年の東京大学大学院医学系医学科専攻修士課程入学試験の筆記試験(専門科目)で当社のシステムをご利用いただきました。さらに、大学だけでなく戦略コンサル会社や製薬会社などグローバルな企業での採用も進んでいます。

社会のニーズに着目しながらさらなる進化を図る。

― システムの開発後は、どのようにバージョンアップを図っていますか?

蛭子 私たちはさらにお客様のお役に立つべく、新機能の開発に力を入れています。
ただ、ご要望を一方的に伺うのではなく『誰一人取り残さない受験機会の提供』という共通の目標に向かって、様々なステークホルダーと協力し、共創しています。お客様や開発メンバー、パートナーの皆様の協力のおかげで、多くの機能を迅速に開発することができました。今後もユーザー中心の設計で開発を進め、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上を実現します。

― ビデオ撮影をしていると、どのようにその答えを導き出したかも分かりますね。

蛭子 その通りです。特に入社試験の際、業種・職種によっては、どういう思考プロセスでその答えを導き出したのかがその人の能力を測る上で重要なポイントとなります。今後はハイパフォーマーと呼ばれる人たちの非認知スキルをスコアリングできるように、センシングやデータサイエンスを駆使してシステムのバージョンアップを図っていきます。

システム開発力を活かし、国内外の社会課題を解決したい。

― 今後の展望をお聞かせください。

蛭子 現在取り組んでいるプロジェクトの一つに、リモートワークのモニタリングシステムの開発があります。これまで人事部や経理部は機密情報を多く取り扱うため、リモートワークの導入が難しいとされていました。しかし、当社のシステムを利用すれば、安全にリモートワークを実施することが可能となります。これにより、従来リモートワークに不向きだとされていた部門の方々にもご利用いただくことで、より大きな価値を生み出すことができると考えています。
また、グローバル化にも力を入れており、現行システムの単純なローカライズに留まることなく、現地のニーズやその奥のインサイトを捉えながらサービスデザインを進めています。

― 他に社会課題で解決に貢献したいと考えている事はありますか?

蛭子 日本国内に目を向ければ、教育機会の均等化、情報格差が大きな課題となっています。当社はあらゆる人に平等で持続可能な学習機会を提供し、それらの社会課題解決の一助になるべく努めていきます。また先ほど海外進出への思いを話しましたが、教育格差や地域格差が問題となっている国や地域に対しても課題解決のお手伝いができればと考えています。オンラインでも公正性が担保できるシステムを、引き続きバージョンアップしながら提供していくことで、SDGsの目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」を実現したいです。

 

株式会社サーティファイ

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主な事業内容はビジネス能力、技能に関する資格検定試験の開発、主催、実施と対応した試験問題集の開発、販売とオンライン試験サービス「スマート入試」の開発・提供です。ビジネスで役立つ知識と技術の習得を目的とした資格検定試験は、多くの受験者や指導者の皆様が“実務的な試験である”と高く評価。ビジネス社会が求めるスキルを習得するための指標として、累計360万人を超える方々よりご受験いただいています。

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