6次産業を学ぶ学生達が地域固有の枝豆の栽培を継承。 自分たちで育てた豆で納豆の商品化にチャレンジ。

2024.03.05 Tue

新潟食料農業大学の「6次産業化クラブ」は、胎内市の高橋家に代々受け継がれてきた枝豆(通称:ろくすけ豆)の栽培を2021年に継承。耕作放棄地などを活用し栽培に挑戦、試行錯誤の末、栽培に成功しました。その後、その豆を原材料にした納豆の商品化に向けて着々と準備を進めています。

栽培を始めた経緯や目標、納豆の商品化に向けての課題、今後の夢・展望などについて新潟食料農業大学 社会連携推進部社会連携推進課 渡部貴子さん、6次産業化クラブ代表 結城 連さん、副代表 田上 陽菜さん、西 郁美さん(3名ともにフードコース・2年生)に伺いました。

 

クラブ活動を通じて、地域の活性化と生産・加工・販売のスキルアップを図る。

― まず6次産業化クラブの活動内容を教えてください。

結城 当クラブは2019年に発足して現在30名ほどの部員が、週に1回活動しています。具体的な活動内容は、大学内圃場での野菜栽培や販売、調理などを行っています。私たちは「ろくすけ豆」を担当。栽培した枝豆は実際に地元のスーパーやJA、朝市(三八市)で販売しています。

昨年6月には、ろくすけ豆の植え付けイベントを実施しました。一般の方や学内の他クラブのメンバーも参加し、交流を図りながら約5,000本の苗を植えつけました。そして9月には収穫祭も実施いたしました。

― どのような事を目標に活動を続けているのですか?

田上  生産した作物や加工品を販売して地域の活性化も図ると共に、6次産業を通して生産・加工・販売のスキルを身につけるのが目標です。

 

― 皆さんは2年間活動されてきて、どのようなことを学べましたか?

西 活動は多岐に渡っていますが、すべてが初めての体験で、勉強になることが多いですね。またイベントや朝市などでの販売を通じて、地域の方々と関わる事ができます。これも当クラブ ならではの素晴らしい活動だと実感しています。


当間高原リゾート ベルナティオの朝食バイキングに提供、同ホテルの朝市「あてマルシェ」にて販売もいたしました。

 

地域の幅広い世代の方から励ましの言葉をいただく。

― 胎内市に古くから伝わる「ろくすけ豆」を栽培することになった経緯を教えてください。

渡部 通称「ろくすけ豆」は胎内市小舟戸集落の高橋家(屋号:ろくすけ)で何代にも渡り継承されてきた枝豆の固有種ですが、栽培が困難となり、このままではろくすけ豆が途絶えてしまうと懸念されていました。そこで「6次産業化クラブ」の学生がろくすけ豆の種を継承し、貴重な豆を後世に繋いでいこうと活動を始めたわけです。

 

― どのような特徴がある豆なのですか?

結城 香りの強さが風味の特徴だと思います。また納豆に加工したときは、本当に色鮮やかで食べた時の皮の食感や粘りけの良さが魅力です。大粒なので黒豆に近いようなイメージでしょうか。

 

― 地元の方との交流で印象に残っているものは?

田上 地元の方でも「ろくすけ豆」をご存知ではない方がいて、「おかげでふるさとの再発見になった」、「自分も栽培してみたい」という言葉をいただきました。また試食した方は「美味しいよ」という言葉を掛けていただき、もっと頑張って作ろうという原動力になりましたね。

 

結城 大学のオープンキャンパスで納豆の試食会を行った際に、訪れた高校生から「食べやすい納豆ですね」と予想以上のリアクションが返ってきました。自分たちと同じような若い世代にも好評だった事が嬉しかったですね。ろくすけ豆のことを知ってもらうために活動していますが、ろくすけ豆を通じて、6次産業化クラブの活動を知っていただく機会にもなっています。私たちの活動も応援していただけて嬉しいです。

6次産業化クラブ代表 結城 連さん

 

耕作放棄地を中心に、土壌改良から植え付け、収穫までを体験。

― 栽培をする上での課題や苦労した事はありますか?

渡部 主な栽培地は地元の方からお借りした耕作放棄地なので、開墾から始めて枝豆に適した土地に改良していく必要がありました。学生さん達は農機具に頼らず手作業で進めていったので、植え付けまでが大変だったようです。

 

西当クラブの全員が畑づくりの素人だったので、土壌改良をしようにもどのような肥料を撒いていいのかわからず教授に相談しました。農機具を使わず、鍬で耕しながら堆肥を撒いて、枝豆が育つような環境に変化させていきました。

結城 確かに大変な事もありましたが、農業好きな人たちが集まっているので、やっぱり活動は楽しいですよ。機械に頼らない泥臭いやり方ですが、ゼロからみんなで話し合って作っていくのは、絶対に他では味わえない本当に素晴らしい体験だと思います。

 

収穫したろくすけ豆を原材料に農福連携で「納豆の商品化」を目指す

― 収穫をした「ろくすけ豆」を加工するというアイデアはどこから生まれたのですか?

結城 新潟県は日本でも有数の米どころですから、米の藁に付いている納豆菌を利用した藁苞(わらづと)納豆を製造したら面白いのではないか、というのが出発点でした。

 

―企業との連携はどのように進んだのでしょうか?

渡部 社会連携推進課に、納豆に加工できる企業紹介の依頼がありました。そこで、以前から農福連携でお付き合いのある新潟市北区の社会福祉法人 とよさか福祉会 豊栄福祉交流センター クローバー歩みの家様に納豆への加工を相談しました。

クローバー歩みの家の担当者の方に胎内キャンパスまでお越しいただき、学内の圃場やフード実習室を見学していただきました。

また、学生がクローバー歩みの家様を訪問し、納豆製造など施設見学をさせていただきました。

 

 

―今回の農福連携でわかったことはありますか?

結城 納豆の生産ラインを見学した際には、具体的な作業工程について詳細に説明いただきました。そして、「ろくすけ豆納豆」の製造において、どのように工程を進めるかについても意見交換を行いました。その際に当初は藁苞の納豆を作りたかったのですが、他社の納豆へ藁苞の菌が混入してしまう可能性等、クローバー様が企業から受託している既存製品へのリスクを考慮し、現時点ではプラスチックパックで商品化を進めています。

 

田上 今は試食も終わり、パッケージデザインを考えているところで、商品化まであと一歩。今年の夏に計画通りに収穫できれば、今年中に発売できると思います。あとは販売場所の確保が課題です。

6次産業化クラブ副代表 田上陽菜さん

 

西 1次産業の農業、2次産業の製造業、3次産業の小売業を、部員がそれぞれの役割を果たして、情熱を繋げて一つの商品を作り上げる。それが部の名前でもある“6次産業化クラブ”のいちばんの魅力だと思います。

 

― 藁苞へのこだわりは、今後も持ち続けていきますか?

結城 難しいのはわかっていますが、個人的な夢、ロマンです。もう一つ、理想があります。納豆の醤油タレもろくすけ豆で作りたい。「学生がすべて1から作りました」というのはすごい事だと思いますね。

 

農業を楽しみながら、ろくすけ豆の商品化とブランド力アップを目指す。

―新潟食料農業大学内での連携もありますか?

田上 本学にはさまざまなクラブ・サークルがあり、連携して、活動の幅や新しい可能性が広がっています。実際に6次産業化クラブのロゴマークはイラストサークルにつくってもらいましたし、微生物クラブは酵母を利用した発酵食品を作っており、パン作りの材料として当クラブで収穫されたさつまいもを使って、さつまいものねじりパンと、さつまいもと胡麻のプチパン作りなどをしました。

 

― 今後の6次産業化クラブの展望を教えてください。

西 ろくすけ豆のブランド化を目指しています。黒埼茶豆のように、新潟の夏の名物に育てていくのが夢です。その製品を通じて、私たちの活動を多くの方に知ってもらえたら嬉しいですね。

6次産業化クラブ副代表 西 郁美さん

 

結城 納豆の商品化に向けて、ろくすけ豆の生産量を増やしたい。そして当クラブの活動内容に興味がある人を集めて6次産業を楽しみたいです。また耕作放棄地の再利用のように、地域との連携をさらに深めて、学生のエネルギッシュなパワーで地域活性化のお手伝いができればと思います。

 

渡部 6次産業化クラブはフードコースの学生が大半ですが、勉強しながら試行錯誤を繰り返し、自らの力で栽培(アグリ)・食品加工(フード)・販売(ビジネス)まで実践しており、コースを横断した学びを、クラブ活動で体験・習得できていると思いますね。

新潟食料農業大学 社会連携推進部社会連携推進課 渡部貴子さん

 

 

新潟食料農業大学

〒959-2702 新潟県胎内市平根台2416(胎内キャンパス)

TEL:0254-28-9855 / FAX:0254-28-9856

〒950-3197 新潟県新潟市北区島見町940(新潟キャンパス)

TEL:025-212-3301 / FAX:025-212-3302

https://nafu.ac.jp/

農作物の生産から、加工・流通・販売までを一体的に学ぶ食の総合大学。1年次より食のつながり(フードチェーン)全体を学び、2年次より「アグリ」「フード」「ビジネス」の3コースより選択し、専門知識・技術を修得。実学重視のカリキュラムで、将来食料産業で活躍できる“食のジェネラリスト”を育成しています。

6次産業化クラブ

大学内圃場での野菜栽培や販売、調理などを行っています。最近の活動では胎内市内にあるスーパーウオロクさんで野菜を販売させていただき、地域の方に自分たちが育てた野菜を食べてもらえる良い機会となりました。今後は「生産」「加工」「販売」と一連の流れを作り上げていくと共に地域の方の協力を得ながら活動の幅をさらに広げていきたいと考えています。

Instargram: https://www.instagram.com/63club_nafu/

 

 

各種リンク