パラスポーツの体験を通して、 障害者との共生を考える。

2023.01.11 Wed

※本稿では、「障害」という字を採用します。理由は法令文書で「障害」が使用されていることに加え、「障害」が本人にあるのではなく、障害(障壁)は「社会」にあると考える「障害の社会モデル」を基盤にしているため。
※「障害者自身は「差し障り」や「害悪」をもたらす存在ではなく,社会にある多くの障害物や障壁こそが「障害者」をつくりだしてきた。このように社会に存在する障害物や障壁を解消することが必要である。このような社会モデルの考え方と条文では,「Persons with Disabilities」と表記していることから,現段階では「障害」の表記を採用することが適当である」(「障害」の表記に関する検討結果について:平成 22 年 11 月 22 日 障がい者制度改革推進会議「障害」の表記に関する作業チーム)

 

新潟医療福祉大学では、新発田市との連携事業「パラスポーツ出前講座」、大学のカリキュラムには1年次は全学科で実施する「車いすバスケットボール」など、障害者スポーツの普及・体験活動に積極的に取り組んでいます。

それらの活動の中心人物である健康科学部 健康スポーツ学科 佐近慎平 准教授に、どのような思いで企画・運営しているのか、また目指すべき「障害者との共生社会」について伺いました。

 

パラスポーツの体験で、障害者への理解を深める。

―どのようなパラスポーツの普及活動をしていますか?

佐近 新潟県教育庁、新発田市スポーツ推進課、新潟市小学校から、福祉教育の一環として小学生にパラリンピック教育を行なってほしいという依頼がありました。そこで私のゼミの学生と小学校へ出向き、車いすバスケットボールなどを体験してもらう「パラスポーツ出前講座」を行なっています。

 

― 「パラスポーツ出前講座」を通して、こどもたちに考えてもらいたいことは?

佐近 障害のある人とどうやったら、一緒にスポーツや楽しむことができるか考えてもらいたいです。例えば、車いすバスケットボールを教材とした場合は、病院や保健室の車椅子との違いを見つけてもらうところから始めます。そして、車いすバスケットボール専用に開発された車椅子に乗ってもらい障害のある人もない人も道具を工夫すれば、同じ競技で楽しむことができることを体験します。

次は「障害がある人と、どうやったらドッチボールができるか考えよう」と課題を投げ掛けます。すると子どもたちは、「何を工夫すれば楽しめるかな」「ルールを変えたらできるかな」とアイデアを出し合う。このようにパラリンピック教育を体験することで、共生社会の実現に必要な心のバリアフリーを育んでいます。

 

― 講座を実施する上で大事にしていることはなんですか?

佐近 先ほども話しましたが、障害がある方も道具とアイデア次第で、障害がない人と一緒にスポーツや楽しむことができることをわかってもらいたい。その「障害がある方のできることがわかる」をいちばん大事にしています。障害がある人は全ての事ができないのではなく、できることがある。講座を通して、「全てを助けなければならない人」という誤った認識を覆したいですね(IPCのパラ教育の恩恵)。

 

― パラスポーツを体験して、発想の転換を促したいのですね?

佐近 そうですね。全面的に助けるのではなく、その人ができることをまず理解した上で、足りないところだけを手伝う。障害がない人と同じように、障害のある人は“可能性を持つ人だ”ということを認識してほしいのです。では、何を手伝えばいいか分からない時にはどうするか。シンプルに「何かお手伝いすることはありますか?」と聞けばいいのです。しかし距離感があり、聞けない方が多いのも現実。これが今の社会で障害がある方と、障害がない方の大きな壁になっています。このようなパラスポーツ体験が、それを打ち破るきっかけになるといいですね。

各種リンク