パラスポーツの体験を通して、 障害者との共生を考える。

2023.01.11 Wed

こどもをハブに、共生社会の意義を広める。 

― 講義後にアンケートをしたそうですが、こどもの意識は変わりましたか?

佐近 先入観で障害がある人を可哀想と思わず、「私たちと変わらないところもある」と答えた子が多くいました。それは障害者に対する新たな気づきであり、考え方が多様化したことが伺えます。「障害がある人はかわいそう」と答えている人でも、体験を通じて自分なりに考えて、距離を縮めて「工夫をすればお互い楽しくできる」と。そんな考えの“ゆらぎ”が重要で、新しい思考の形成への第一歩になります。また「障害のある人でも、私たちが助けて一緒にやれれば、楽しくできると思います」と答える子も。このような感想を目にすると、講座を開催して良かったと思いますね。

 

― 心の柔軟性があるこどもたちには貴重な体験だったようですね。

佐近 パラスポーツを体験することで、様々な違いがあることを理解しつつ、共につながり、助け合い、支え合って生きていく力を身につけ始めます。一方、それらは一般的には難しい課題のようですね。例えば、海外の歴史ある美術館の入口前には大階段がありますが、その前で車いすユーザーが止まる、人が自然と集まってきて、階段の上まで持ち上げて連れて行ってくれる。障害者への対応が進んでいるというのか、意識の違いなのか、我々日本人が出来ないことではないと思います。

 

― 講座を体験したこどもたちから親御さんへの良い影響もあるそうですね。

佐近 学校で学んだことをこどもが家族に伝え教えることは、「リバースエデュケーション」と呼ばれています。講座で学んだことを家庭で話題にして、障害がある人への理解が子から家族へ周りに広がり、それがより良い社会の創生につながる。そういった意味で、地域福祉・保健は小学校のこどもが重要なハブになると注目されています。

 

 

「心のバリアフリー」という言葉がない世界を目指して。

― 出前講座のサポートをする学生に対してどんな期待を?

佐近障害がある人に対しての自然な立ち位置や障害のある人が困っていることを学んで社会人になることは意義深いことです。小学生が障害があっても、道具やルールを工夫すれば一緒にスポーツや楽しむことができると学習する過程を目の当たりにした体験は、住みやすい社会を築いていく上でも重要な視点なると思います。


― これらの活動を通して先生が目指す社会の在り方とは?

佐近先ほど海外の美術館で車いすの方を周りにいる方がサポートする話をしましたが、そこには障害者福祉やボランティアという特別な精神が必要ないのだと思います。「困っている人を助けるのは当たり前」というごく自然な気持ち。それは私たち日本人も行ってきたことですが、手伝いたいけれどどうしたら良いのかわからない、声をかけたら失礼じゃないか、怪我をさせてしまうのではないか等、いろいろと考えてしまいます。

 

― その実現のために大切なことは何でしょうか?

佐近 「お手伝いできることはありますか?」と声をかけ易い社会にすることが共生社会へのはじめの一歩です。障害のある人に興味や関心を持つ、つまり知ることです。授業等で学んだ学生や「パラ教育」を受けた子どもたちが、将来、困っている人を自然に手伝う人になってくれれば。私たちの活動が、その一助になれば嬉しいですね。本学の特徴は医療福祉とスポーツです。トップアスリートやプロスポーツ選手を育成しながら、障害がある人とスポーツを楽しみ、さらに障害がある人がトップアスリートを目指せる環境をサポートしてきました。それらの活動を通じて、究極的には「心のバリアフリー」という言葉自体が、この世界から必要なくなることが理想ですね。

 

新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科

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スポーツに関連する幅広い科目での理論と実践のバランス良い学びを地域に還元しています。また資格取得に直結した豊富な課外活動も重要視。そしてスポーツに関する複数資格取得などにより、卒業生は学校教員・スポーツ施設・医療機関などで活躍しています。また、スポーツ活動を通じて培ったコミュニケーション力やリーダーシップ、チームワークスキルは行政機関や大手一般企業などからも高く評価され、幅広い業界への就職を実現しています。

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