地域での活動を通して、社会とつながる体験を。 自立訓練(生活訓練)のための施設がオープン!

2024.05.31 Fri

株式会社NSGソシアルサポートは、障がいのある方の就労移行の訓練などを展開し、雇用促進と社会貢献の実現を目指す事業活動を行っています。そして2024年4月に、社会(就労)につながる一歩手前の自立訓練(生活訓練)をできる拠点として「ソシアルポノ」を新潟市中央区古町にオープンさせました。

どのような経緯でこの施設を立ち上げたのか、具体的に実施しているプログラム、利用者の変化、古町に施設を作った意味、そして今後の課題や展望などを(株) NSGソシアルサポート 代表取締役社長の樋口督水さんに話を伺いました。

さまざまな理由で立ち止まっている人が、社会へ進むための居場所。

― 「ソシアルポノ」の特徴と目的を教えてください。

樋口 「自立訓練(生活訓練)」という内容の福祉サービスの一つで、社会に出る前に人との関係に慣れたい人や、社会参加に自信がなくなった人を対象に、もう少し人との関係や経験を積んでもらうための場所です。安心できる空間で、「失敗と成功を繰り返して自信を高める場が必要」という思いで立ち上げました。施設名の由来ですが、社名の一部の「ソシアル」に「ポノ(Pono)」をプラスしたものです。ポノはハワイ語で「融和する、つながる」という意味です。利用者がこの場所で、いろんな方々とつながることで、多くの経験を積んで、社会へ巣立ってほしいという思いを込めました。

 

― 若者を主な対象にされていますが、どのような方が利用されていますか。

樋口 大学や専門学校を休学中、又は退学して家にいることが多くなった方や、一度働いたけれど退職して以降、社会参加に自信が持てなくなった方などが主な対象者です。そのような方は、コミュニケーションが不得手だったり、職業を選ぶことの想像が難しかったりします。そこで、私たちと一緒にさまざまな体験を通して、人生の選択肢を広げ、次の一歩に進んでもらいたいと思っています。年齢的には65歳まで利用できますが、若年層を主な対象とした施設は、新潟県内ではまだ少ないです。

 

― 若者が来やすいように、このようなおしゃれな空間なのですね。

樋口 その通りです。“いかにも福祉施設”という感じだと、気軽に入りづらいじゃないですか。それに古町の景観にも馴染まないと思うので、カフェ風のインテリアに。そして、「通いたくなる場所」「居心地がいい場所」を目指しました。そして利用者自身も、そこに通うことがステータスになればいいなと考えています。

独自のプログラムを通して、新しい知識や体験を積み重ねる。

― どのような思いでプログラムを計画したのですか。

樋口 「地域コミュニティ内で、安心した中での挑戦」というテーマでさまざまなプログラムを用意しました。そしてプランを立てたら、それを実行して体験し、新たな知識を得る。そのような一連のプログラムを振り返り、また新しい計画を立てる。1回でうまくいくことは難しくても、それらを繰り返し体験することで、社会での経験や人との関係に慣れてもらえればと思っています。このような“支援つき試行錯誤のサイクル”は、私たちスタッフで開発した独自のプログラムです。

 

― 具体的にはどのようなプログラムがあるのですか。

樋口 例えば毎週水曜日は「Pono活動」と称して、各自の興味・関心のあることを探求しています。活動は月単位で完結するテーマを設定し、最近では料理作りにチャレンジしています。1週目は作る料理を計画して、2週目は材料を考えてどこのお店で購入するかを決め、3週目は実際に材料を買って作ってみる。それらを利用者が力を合わせて行う中で、新たな知識を得ることができます。

 

― 町に出て活動するプログラムもあるそうですね。

樋口 はい。「フィールド活動」として町に出て商店街で様々な活動をして、それらの体験を振り返ったり、まとめたりしています。先日は、商店街にあるお店の看板をそれぞれが撮影してきて、その歴史や個性をみんなで発表しあってシェアしました。利用者はこの活動を通して、興味があることを調べて、地域社会での体験活動を深めています。このようなプログラムは、利用者の受講状況を見て修正を加えながら翌月のプログラムに生かしています。

明るく優しい雰囲気づくりで、利用者にも前向きな変化が。

― 4月にオープンして間もないですが、利用者に変化はありましたか。

樋口 最初は緊張されていたようですが、利用者は同年代で悩みも共通しているので、思いをシェアすることで内に溜めずにいられるようです。そして周りの人に刺激されて、「自分も何か発信したい」という気持ちになり、どんどん議論が活発になってきています。そうした変化と共に皆さんの表情もずいぶん明るくなりました。私たちもより前向きな気持ちになれるように、明るく話しやすい雰囲気づくりを意識しています。

 

― 利用者の方はどのような感想を語っていますか。

樋口 就職に向けて頑張っている若者がいるのですが、話を聞いてみると「すごく居心地がいい場所です。楽しみながらプログラムに取り組んでいます」と明るく答えてくれました。また、その方は別の就労移行の施設に通っていたそうですが、そこと比べると「いきなり就職活動というわけではなく、ゆっくりとステップを踏みながら、いろんな活動を通して社会性や習慣を整えられるのでありがたい」と違いを語ってくれました。社会経験が少ない人でも、無理せず落ち着いて目標に向かって取り組める和やかな雰囲気づくりも大切にしています。

古町を拠点に活動エリアを広げ、多くの方が行き来できる場所にしたい。

― そもそも、なぜこの古町にオープンしようと思ったのですか。

樋口 いろんな経験が積める場所は古町だと思ったので、ここを選びました。アーケードの中にはいろんな職業がギュッと詰まっているじゃないですか。多彩な個人商店があり、そこには接客をする方や、裏方として事務に励む人、それに役所や銀行、学校もあります。働く人の年代も幅広いですしね。その地域の方と連携しながら体験の場を提供してもらいたいと思っています。

 

― プログラムの一環として古町商店街でボランティアを経験されたそうですね。

樋口 商店街のイベント準備のお手伝いや、防災活動の一つで火災点検にも参加させてもらいました。活動をする中でコミュニケーション力が付きますし、商店街の方から喜ばれるので、ちょっとした成功体験が自信にもなります。今後の課題はアルバイト体験です。短時間でもいいので、働いてお金を稼ぎ、それを自分でどう使うかも大事な経験なので、それはぜひ実現させたいですね。

 

― これから先、この施設をどのように発展させていきたいですか。

樋口 古町を拠点に、少しずつ活動エリアを広げていきたいと思っています。例えば、アルビレックス新潟の試合会場での清掃活動など、一般企業との連携を図っていきたいですね。また逆に企業の方にここに来てもらい、利用者との共同作業や体験の場に。学生たちにも来てもらい、学んでいることを教えてもらうということもイメージしています。そのように開放しながら、ニュートラルな状態で行き来できる場にしたい。それが最終目標ですね。

 

自立訓練(生活訓練) ソシアルポノ

ソシアルポノでは、多様な価値や人々が行き交う新潟市・古町のフィールドで<人と社会とつながる>体験ができるプログラムを用意しています。社会(就労)につながる一歩手前の若年層を対象に、自分自身の生活や人生の選択肢を広げ、次の一歩に進められるよう応援します。

〒951-8063 新潟県新潟市中央区古町通7番町1001-4
TEL:025-211-4271 (NSGソシアルサポート内)
https://nsg-ss.co.jp/pono/

 

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